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どこまで真実 【逆さに吊るされた男】田口ランディ

様々なところの文献に目を通していると、どうも平成で一年を終える今年中には「教祖」に刑が執行される可能性が高いという....

 

 

田口ランディ【逆さに吊るされた男】のふうにいえば教祖・A。一連の事件に関与した者たちも、おそらく同時期に“吊るされる”。

以前、職場に地下鉄サリン事件を知らない同僚がいて、驚いたことがあった。私が思春期の頃に起こったそれは、本当、まいにちが衝撃的。サリン事件に始まって、時間を経ずに、警察のお偉いさんが銃撃されたり、カメラの目の前で刺殺事件なんかが起こったりもする。‥たしかに、今の若者が聴けばにわかには信じがたい出来事の連続だろう。

 

 

逆さに吊るされた男

 

 

あのテロ事件の「実行犯」と、文通を交わしていたという著者。本の体裁は“フィクション”となっているが、文通していたこと自体は事実であるらしい。作中、実行犯の名は「Y」と記されているけれど、かつて【殺人マシン】とも呼ばれていた男は、事件を知っている者なら特定できる。

私には解らなかった。本に書かれていることが真実であるとすれば、彼は普段、たいへんに穏やかな性格をしているのだという。“語り口”も、どこか優しい‥。そんな彼が一体なぜ、誰よりも多いサリンを車内にまき散らし、ゆえに【殺人マシン】と呼ばれてしまったのか‥‥その答えが本書の中にあった。

 

 

面会、文通を交わしていたのは『羽鳥よう子』とされる。架空の人物で、職業は作家。Yの人間性に触れていくうち、彼女の視線は次第にオウムそのものへと向けられていく。後半は専門(オウム)用語の連発で、目がクラクラしてくる。彼女自身も、もっと若い頃に出合っていたら分からなかったと、オウムの“源泉”を巡る旅は、第三者目線でみても、おどろおどろしい。

 

二〇××年 Y 死刑執行

 

唐突に、そして冷酷に‥本書はこれで締めくくられている。拘置所内で桃を買っただの、意外な“日常”を覗かせてくれるY。心を許した人に対しては、ユニークな面もあったらしい彼に、本を手にした私も含めてまだ実感は持てずにいるが、「その時間」は確実に近づいてきている。

ユニークといえば、一連のオウム事件で冤罪被害に遭われた河野さん(本書でも実名)。ずっと「オネエ言葉」で羽鳥の取材で応じていたという、あの話は事実なのか否か‥。意外性も相まって、ある意味、Yより気になって仕方がなかった。

 

 

逆さに吊るされた男

  

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