センテンス・オータム

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【すべてに疲弊した?あなたが観る物語】エースの映画日誌ミニ 《2019年3月21日版》

最近の週刊誌は「死」にかんするものが多い‥‥そう林真理子が連載中のエッセーのなかでボヤいていた。

 

なるほど、言われてみれば。「週刊朝日」あたりは特に目に付く。試しに先月2月にあった特集をザっと列挙してみよう。【困る前に整える死後の手続き】【生前にできる死後の手続き】【書き込み式死後の手続き】

‥‥と、毎週のように“その手”の話題を繰り出していた。準備は早いに越したことはないが、それにしたって煽りすぎなのでは(苦笑)。できるならば、正直あまり世話にはなりたくない記事たちである。

 

これから私たちが迎える超高齢化社会に伴い、認知症患者も増えてくるというが、ただ暗いだけの世の中にはなってほしくない。‥そこで今回お届けしたいのは、年老いた夫婦の愛を描いたきみに読む物語だ。

 

認知症を患い、すべてを忘れてしまった妻に、夫は寄り添い本を読み聞かせている。記憶を取り戻させるために、ふたりしか知らない、夫婦ふたりだけの物語。互いに愛し合っていた、あの頃の貴女に、もう一度、会いたい‥‥。最後まで希望を持ち、“現実”と向き合い続けた夫の身に起きる、奇跡とは――

 

 

きみに読む物語 [DVD]

 

 

家族とひと夏を過ごすためにノース・カロライナにやって来た良家の子女アリー(レイチェル・マクアダムス)は、地元の青年ノア(ライアン・ゴズリング)から熱烈なアプローチを受け、やがて愛し合うようになる シネマトゥデイより

 

 2005年公開のアメリカ映画。ライアン・ゴズリング主演。

 

物語を読むというだけあって「回想」の映画だ。出会いのところから振り返り、合間に、夫婦の“いま”が映し出される。

その回想部分は、なんてコトはない。身分ちがいの、障害の多さゆえに盛り上がっていく、若い男女の恋愛模様が中心に描かれている。‥まぁ、ありがちな展開だ。

老女が何者であるのか、最初は伏せられているが作品の構成上、その人自身が「物語」に登場してくる女性と同一人物であるのは、わりと早い段階で解かる。したがって、途中から回想のなかのお洒落な女性と、認知症気味の老女を重ねて見てしまう。彼らが過ごしてきた、湖のある美しい景色だけがあの頃のまま、ずっと変わらない。

 

 

結論から言おう。彼女は、記憶を取り戻した。が、それは束の間の「再会」で、すぐに記憶を失くしてしまった。哀しくもリアルな現実が描かれる一方、筆者は別の理由で大いに不満をいだく。

映画冒頭での「告白」を実践するかのごとく、彼なりに永遠の愛を誓ったつもりなのだろうが、あまりに“独りよがり”なラストのシーンに辟易したのである。彼には、最後まで物語を読み続けて欲しかったのだ。‥‥たとえ、またイチから始まることになろうと、何度でも、今の妻も愛しているのなら。

 

もっとも、この点についてはそこへ至るまでの夫の苦労が、劇中では描かれていなかったのも、あっただろうか。本作の老女は施設に入っていたとはいえ、現実には介護する側の負担だってあるのだろうし、なかなか「愛」だけでは乗り越えられない部分も、たしかにある。

 

将来、あなたが愛しい人に宛てた「物語」の結末が幸多からんことを――

 

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