センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

「私は、女優」

京極夏彦ふうに云うならば「厭な事件」があった。

 

 

先日、新宿駅にも程近い高田馬場で起こった異臭騒動‥。僕ら世代で「駅構内・電車内で異臭」と訊くと、否が応でもあの凄惨なテロを連想してしまうが、不幸中の幸いにも、今回のは背景がまったく異なっていた。

 

事件現場で目撃された赤い服の女‥。防犯ビデオの解析などから、どうやら、この女が乗客に向けて発せられた「催涙スプレー」が原因であったらしい。

逮捕時、赤い服の女は実名報道をされていたが、大丈夫なのだろうか。‥知れば知るほど、いわゆる“メンヘラ”の類に、収まりそうもないのだ。この手の事件にありがちな、おそらくもカノジョも、実名は次第に伏せられていくことになると思う。

 

 

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『わたしは、ストーカー被害に遭っていた。正当防衛だ』

 

赤い服の女はそう云った。もちろん、このような事実はなく、仮に事実だとしても混雑する場でスプレーを噴射すれば、他の乗客が巻き添えになってしまうことなど、判りそうなものだが、彼女にはそれが判らない。自分以外、他に何も見えていないのだ。

 

この手のタイプの人間が、いちばん怖い。常に自分本位で生きているから、人に危害を加えることも、何とも思わない。そして『ストーカー被害に遭っていた』の発言からも判るとおり、妄想に取り憑かれている。‥赤い服の女が書いていたとされるブログを覗くと、さらに恐ろしい事態となっていた。

 

捜査員にも『芸能人』を名乗っていたそうだが、ブログでは『アイドル』を自称し、あたかも芸能活動をしているかのようなエントリーの数々が散見できる。なかには芸能人と親密な仲となっているように思わせる記述も見受けられ、ここまできたら、さすがに誰もが「嘘」だと思う。

 

‥しかし、彼女は、決して嘘をついているわけではない。

 

なぜなら自分を、本当のアイドルと思い込んでいるのだ。だから、彼女にとって‥彼女だけには、すべてのことが「真実」となり、外野が何を云っても、彼女にはそれが通じないーー

 

 

以前「世にも奇妙な物語」において【私は、女優】という作品があった。まさに赤い服の女と同じような、妄想に生きるオンナの話‥。物語の主人公も、自らを「女優」と信じて疑わなかったのである。“呪い”が解けたときの、主演・菅野美穂の秀逸な表情が今でも忘れられない。

 

 

時を同じくして、フランスのゲーム大会で優勝したと、虚偽の報告をした男がいた。だが、これにはまだ救いがある。一応、「自覚」はあるからだ。

ヒトは生まれながらに、場面場面で演じわけながら生きている。しかし、自分をコントロールできる「自制心」があってこそのものだ。それを制御できなくなってしまった人間の危うさを、今回、見せられた気がした。

 

 

headlines.yahoo.co.jp