センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

感動野球.2016

20世紀の、ある野島伸司ドラマで「ノストラダムス」を取り扱った話があり、よく憶えている。

 

当然のごとく、かの有名な“大予言”についても言及していたのだが、ここではノストラダムスの「嫉妬」ではないかという見解がなされていた。‥人類滅亡論は予言したわけでもなんでもなく、ただの虚言‥。

予言することは、いくらでもできる。けれども、限りある命のために、この目で直接「未来」を覗くことができない。それが、悔しい。

つまり「今」というときを生きる私たちに対し、彼は嫉妬をしていた。したがって、起こりもしない出鱈目を書物に書き遺し、恐怖に陥れることにしたーー

 

世紀の詐欺師‥‥野島作品では、そんな愚か者のレッテルを張られていた彼であるが、もちろんこれは創作であり、真意のほどはわからない。‥しかし、「嫉妬説」がもし真実だとしたら、私は彼の気持ちが少し、理解できる。同じような想いに駆られていたことがあるからだ。

 

 

ファイターズという球団があるかぎり、永遠に見届けたいーー

 

自分があの世に逝ってからも、球団が消滅しないかぎり、おそらくファイターズは在り続ける。そのときに、ファイターズは一体どんなチームとなり、どんなスター選手がいて、どんな野球をしているのだろう‥‥。もしかしたら、今よりも、うんと魅力的なチームになっているかもしれない。それを知れないのが、とても哀しい‥。

 

発想自体は、ドラマで描かれたノストラダムス寄りかと思う。‥自分自身のことであれば「悔いなく」といった逝き方も、あるいは可能なのかもしれないが、こればかりは本当にどうにもならない。自分以外の誰かを強く愛してしまった者の、哀しき運命(さだめ)である。もっとも私の場合、ヒトの“所有物”なのであるが。

 

 

ノストラダムスの大予言 迫りくる1999年7の月人類滅亡の日 (ノン・ブック)

 

 

こうした想いを、長年抱えていた。ファイターズが、私のすべてだった。

ファイターズの「日本一」を見るまでは、死ねない。‥これは、10年前に叶えられた。ファイターズの「黄金時代」をみたい。‥連覇も達成できたし、これも叶ったといっていいだろうか。‥だが、それでも人間の欲とは尽きないものである。きっと、まだあるはずだ。

 

もっと、今よりもっとすごい「感動」を味わえるシーズンが‥‥

 

 

それが今年、2016年シーズンであった。日本一のとき以上の感動。あの感動よりも上をいく感動なんて、もう難しいと、薄々感じていたのに。今まで体験したこともない、すばらしくドラマチックなシーズン‥。

こんな野球を年間を通じ魅せられて、もし今後私の身に何かあったとしても、もう悔いなく旅立っていけるだろう。大袈裟のようにも聴こえるだろうが、私は半分マジメである。今シーズン以上の感動は、起こりえないのではないか‥。それくらい劇的で「奇跡」の連続だった。

 

だから、私はもう“未来の人”に嫉妬はしない。心からの感動というものを、現世で存分に味わえたから。

‥あとわずかに欲をいわせてもらえば、天国にいるオヤジにも、今年のたくましくて強いファイターズを見せてやりたかった。日本ハムと広島の間で覇権が争われるなんて、夢のようだと、泣いて喜んでいただろう。

ファイターズの野球を最後まで‥この目で見届けられる幸せを私自身噛みしめながら、今年の感動を締めくくる。