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センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

【カノン】 中原清一郎

空前の大ヒットとなっている、映画「君の名は。」。

 

 

あいにく映画は視聴していないが、現在、筆者は最近入手した小説版の方を読書中である。したがって、“全貌”までは把握しておらず、限られた情報ではあるけれども「男女入れ替わり」が物語の軸となっているのは、たしかなようだ。

 

この手のものは、昔から数多く存在し、大林宣彦の「転校生」や山中恒の「おれがあいつであいつがおれで」などといった作品が特に有名。男女入れ替わり作品の代表格として、大衆に認知されている。おそらく、この両作品から派生していった作品が、昨今ほとんどなのではないだろうか。

 

 

各々作品の傾向を見るとティーンエイジャーの男女がそれぞれ主人公となり、彼らを取り巻く環境のちがい、さらには性のちがいを面白おかしく描写しながら、コメディタッチで描かれることが多い。

‥たしかに、おじさんとおばさん、中年同士の入れ替わりは見たくないし、絵的にもあまり良くない。なかにはおじさん(父親)と女子高生(娘)の身体入れ替わり、「パパとムスメの7日間」なんて“例外”も、一部にはあるが、大抵は「君の名は。」や、比較的最近の作品でいうなら「山田くんと7人の魔女」でも見られたような“学生ふたり”の入れ替わり。‥そして、女は概ね優等生で、男は劣等生という人物設定が、お決まりのパターンである。

 

これら踏まえると、何もかも異例ずくめだった、中原清一郎著の【カノン】。死を間近に迎えた末期癌を患う中年男性と、一児の子を持つ母親による入れ替わりだ。

『心と身体が入れ替わった!?』 そんなセリフをよく耳にするが【カノン】が“まさに”といった塩梅で判りやすい。‥厳密にいうと、医療の力によって両者は互いの「記憶の交換」を、意識的に試みたのである。

 

 

カノン

 

 

薄れゆく記憶‥。だんだん自分が自分でなくなる難病を、彼女自身も抱えていた。しかし、残される我が子を想うと「母親」はいた方がいい。それならと、もうすぐ肉体を失う癌患者の男に自らの“代わり”になってもらうことを、女は望んだ。父親でなく、ひとりの子の「母親」として生きていく、男のあらたな第二の人生が始まった‥‥

 

コメディな要素は皆無といってよく、「母親」になって戸惑うばかりの男の視点が主眼に置かれたストーリー。徐々に「生き甲斐」を見出していく男と、病床にある、余命いくばくもない男の身体になった女の、本当の想い‥。

 

どうだろう。ザッとだが、この物語の重厚さを多少は窺い知ることができただろうか。こうした「男女入れ替わり」作品を目にしたのは私自身初めてであり、精神世界をも考えさせられた。

 

ブームに乗っかって、是非こちらも推奨したい。