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センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

ゆくる人2016 【陽岱鋼】

野球 書籍

読売への移籍が正式に決定した、陽岱鋼

 

 

これで来シーズン、巨人戦を観る楽しみが増えた。彼がトップを担えば、安定感のある坂本をクリーンアップに固定できるし、自身もまた、中軸を打てるだけの力は十分にある‥。いずれにせよ、攻撃面のバリエーションが増えたのは確かだろう。

しかし、陽といえば近年は守備の方がクローズアップされる機会が多い。9月のヤフオクドームで魅せた「背走キャッチ」も記憶に新しいが、彼の守備範囲の広さを持ってすれば、狭い東京ドームではもったいないほど。左中間右中間に膨らみのない、あの独特な形状が、恨めしくなりそうだ。

 

 

来季、読売ファンに注目してもらいたいのが、もうひとつ‥。お立ち台での、振る舞い方だ。

『サンキューでぇす』パ・リーグファンにとってはあまりに有名な陽の決め台詞。ただ、これを口にしたあと、なぜか途端にテンションがガタ落ちする(笑)。‥おそらく、意図したものではなくて、彼の語彙や表現力といった部分が、いささか人より足りていないだけなのだと思う。

だから、インタビュアーは陽から話を引き出すのに、毎回苦労している。勢いよく飛び出したあと、淡白すぎる物言いにインタビュアーもファンも、実はけっこうヤキモキさせられるのだけれど、これもすべて含めて「陽岱鋼」であるということ、認識していただきたい。

 

 

ファイターズマガジンNo.56 2014年8月号

 

 

陽に対しては北海道日本ハム入団前から、個人的にも思い入れがある。

ドラフトにおいて、ファイターズが久々にクジを引き当てた選手だった。また、この年のドラフト会議が一筋縄ではいかなったことが逆に、ドラマチックな要素を生み出している。「交渉権確定」の文字が入ったクジを手にしたのは、実際にはトレイ・ヒルマンであったのに、競合した福岡ソフトバンク王監督が手をあげた。いわゆる、早とちり。

 

ヒルマンは実に“確信”を持った表情をしていたが、そこは外国人。やはり、100%そうだと云いきる自信まではなかったのだろう。勘違い発覚後、ただちに訂正がなされた。このとき、会見場でみせた当時の陽チョンソ青年の落涙が話題を呼ぶ。

数分の間に大きく運命を翻弄された高校生の心中‥。しかも、陽は「ソフトバンク志向」だとも云われていた。誰もが「悔し涙」であると信じて疑わなかったのであるが、後年になって自著(※1)で、あれは「嬉し涙」だったと語っている。球団問わず、無事にドラフト1位指名されたことによる‥‥。

 

しかし、本当にそうだろうか。これはファイターズファンへの、彼なりの「配慮」なのではないかと、今でも思っている。少なくとも、あの時点では憧れの球団に入ることを夢見、本人も強く望んでいたにちがいない。急転直下的に“対極な”北海道のチームに決まったショックは、間違いなくあったはずだ。

 

ファイターズに入団し、FA権を取得できるくらいまで一流選手の仲間入りを果たしたのだから、陽も、今は指名されてよかったと感じているだろう。球団と、応援してくれたファンへの感謝の想いもあって、時効と思しき当時の「恨み節」をいうこともなく、“事件”振り返っていた陽は、それはそれで清々しかった。言葉は不足がちで、周囲からクールに見られだけど、彼は優しい人間なのだ。

 

 

糸井嘉男が抜け、陽まで抜けて‥新庄剛志の代から続いてきた、外野の絶対的キーパーソンが、これでいなくなってしまった。西川遥輝ではまだ心もとない。むしろ、守りのマイナス面での方が大きいかもしれない。陽の“代わり”なんて、そうそう出てこないのだ。半ば強引に「卒業」させた日ハム幹部は、その責任をしっかり取ってほしい。

 

 

(※1)陽岱鋼メッセージBOOK -陽思考-