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センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

世にも奇妙な 「君の名は。」

本も相当売れているらしい【君の名は。】。

 

 

実際に私も目を通してみたが‥「?」である。これは、映画を視聴した人が“補完”目的に読むためのものではないだろうか。したがって、まだ映画を観ていない私のような人間が読むと、よくストーリーがつかみづらい。さらにいうと、“視点”が色んなところに飛び飛びで、かなり読みづらい。

‥脳裏に「映像」がインプットされている方なら、おそらくそんなふうにはならないと思う。作者の新海誠氏もあとがきで「【君の名は。】はアニメーション映画という形がいちばん相応しい」と書かれているのだから、多分そうなのだろう。

 

 

 

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しかし、内容はある程度理解できた。単なる“入れ替わりラブコメ”かと、話題になる前は鼻で笑っていたのだけれども、蓋をあけてみたら、ゼンゼン違った。

むしろ、作風は私好みである。もう少し突っ込んだ言い方をするなら、実に世にも奇妙な物語的」といった塩梅。‥さすがにこの言い方には語弊があるかもしれないが、過去に行って未来を変えるとか、過去をやり直すとかはいかにもソレ。

「越境」という、木村佳乃主演の作品が印象深い。第二次世界大戦に勝利し、軍国主義と化した、“もうひとつの日本”がある。そこにはもうひとりの、別を顔を持った自分も存在している‥。つまり、異なる歴史を辿ってきた、別次元の中にある世界。‥小説を読むかぎり、ラストで描かれている宮水三葉も、また別次元を生きてきた彼女と、いえるのではないか。

 

 

閑話休題福岡伸一が自身の連載の中で【君の名は。】は、6年前の震災が“下敷き”になっているという旨のコラムを書いていた。この話は初耳だったが(確かに防災無線だったり連想させるものは本にもいくつか登場する)、もし自分も実在した女子高生になっ‥いや、この際オバサンでもオトコでもいいんだけど、あの日あの時間、そこにいくことができたとしたら‥‥なんて思いも馳せてしまうと、一気に緊迫感を帯びてくる。この作品のように“ほぼ全員”は無理にしても、何人かは、あるいは救うこともできたのだろうか。

 

 

はたして未来は変えられた。そして、運命的な「再会」。三葉と瀧が、あれからどういったストーリーを紡いでいくのか、読者の想像に委ねる形で物語は幕を閉じる。

 

前世でも結ばれていた男女が“この世”で逢うと、人は自然に涙を零すという。当然、過去の記憶はないが、“魂レベル”で感じあえるのだ。 私はこれを野島伸司の【世紀末の詩(第7話)という作品で、はるか以前に教わった。下記は小説のクライマックス部。もはや確信的である。

 

 

やっと逢えた。やっと出逢えた。このままじゃ泣き出してしまいそう、そう思ったところで、私は自分がもう泣いていることに気付く。私の涙を見て、彼が笑う。私も泣きながら笑う。予感をたっぷり溶かしこんだ春の空気を、思いきり吸い込む

【第八章 君の名は。】より

 

 

小説 君の名は。 (角川文庫)