センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

【フィリピンパブ嬢の社会学】 中島弘象

前々から気になっていた本を手にとった。実体験に基づいたルポ‥ノンフィクション好きの血が騒いだが、まず率直な感想を言わせてもらおうか

 

胡散くさい

 

 

色々と‥‥。話がだいぶ美化されている印象。

最後に判明したのだが、やはり、第三者によって手を加えられているようだ。‥大まかな内容は、面倒だから、Amazonのものを引用する。

 

 

「アイシテルヨ~」の笑顔のかげに、凄まじい人生があった。フィリピンパブを研究するうちに、あるパブ嬢と付き合うようになった筆者は、その奴隷同然の暮らしを目の当たりにする。月給6万円、偽装結婚、ゴキブリ部屋に監視付、休みは月に2回だけ…そしてある日、彼女に懇願されて、雇い主のヤクザのところに、なぜか乗り込む羽目に!前代未聞、ノンフィクション系社会学

 

 

 

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私が終始疑問に思ったのは、フィリピンパブ勤めの「ミカ」なる嬢は、本当に実在しているのだろうか。

まがりなりにも水商売に身を置きながら、彼女、“マジ恋愛”をしているのだ。言わずもがな、その道のプロとすれば失格である。彼(著者)を心から愛し、献身的にサポート。‥こんな女、見たことがない。

いや、人間だから恋に落ちることはホステスにだってあるだろう。しかし、交際にいたるまで、特段“ドラマティック”なエピソードはなく、単に客として、“研究の材料”として、店に足を運んだだけ。営利目的なメール攻勢も、水商売ではよくあることだ。

 

日本で水商売勤めをする女性の中に、わざわざ恋愛をしにきている嬢はいないはずだ。いたとしたら、そいつは相当頭が悪い。客のオトコは、大抵「金」の延長線上にいる。金が“キッカケ”で、将来的に結ばれるのであれば、解らなくもない。

なのに、出合った当初から、ミカはまったく金を要求しない。持ち金1000円でいいから、店にきてほしい‥‥。同伴出勤もなしに、デートをしてくれる‥‥。男からしたら、仏様のようなオンナだ。

 

もしかしたら、フィリピン人女性は、惚れやすい生きものなのか?

‥そんなことはないだろう。むしろ、向こうの人たちの方が、より金に執着している。自分のためだけではない。国に残した家族の生活のために“出稼ぎ”にきているのだから。 私の偏見なのかもしれないが、それについては、本書でも幾度か触れられているので、あながち見当違いでもなさそうだ。

以前【愛という名のもとに】という、野島伸司脚本ドラマで、やはりフィリピンパブ?に勤める女性が登場している。彼女は男心を散々弄んだあげく、金を根こそぎ奪い去って、姿を消していた。この一件も、最終的に男が自殺に至る要因となってしまった。‥思春期に視た、この強烈な「トラウマ」が、あるいは私の偏見を生んでいる可能性もなくはない。

 

 

ミカのような女性が、仮にいたとしよう。今度は、自らを自嘲気味に「ヒモ」と語る、男の方への疑念。

当然、彼の“暗部”には触れていないが、この男‥‥数年間まともな仕事もせずに何をしていたのだろう。ミカは『私が働くから』と、懸命な愛を投げかけているのに、少なくとも彼は、それに行動で示そうとはしない。就職活動に失敗したあとは、結婚するまで単発のアルバイトをするだけで食いつないでいた。前夫との偽装結婚解消後も、ミカにパブ勤めを辞めさせなかったのは、おそらく彼にとっても都合がよかったのではないか。いちおう「研究」という名目にしておいて。

決定的だったのは、世界一周旅行の船旅に行ったくだり。ミカは同行せず、本書によれば“何も言わずに”10万円もの大金を、金なしの彼に差し出してくれたらしい。彼女に働かせておきながら、随分といい、ご身分である。

 

 

本書のハイライトは、ミカの背後にいる暴力団関係者と話し合いに出向いたシーンだろう。が、これもどこまでが本当なのか分からない。フィリピン人女性を取り巻く環境、フィリピンの国柄等々は解った。たしかによく調べていると思う。ただ、それだけに、よけいミカという「フィリピンパブ嬢」の異質さが際立ったのも、また確かである。

 

すべてが真実であったなら、著者は運が良かっただけ。決して第二第三のミカを夢見ないことだ。

 

フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)

 

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