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センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

【夫のちんぽが入らない】 こだま

親とか兄弟とか、残してきて死ぬほど後悔してることって、なんもないの。

不思議だよ。人より持ち物が少ないのって寂しいけど、いざという時は軽くて済むーー

 

 

【ロングラブレター漂流教室】浅海暁生演ずる窪塚が口にした、いささか悲観的なそのセリフに、いたく共感する。

人が死ぬとき、今世で自分がやり残してきたという後悔よりも、愛する人たちへの別れの「未練」の方が、おそらく、大きいのだと思う。別れたくないから、まだ大好きなあのヒトと一緒にいたいから‥‥みな懸命に生きようとする。

 

それでなくても、いつミサイルが飛んでくるか分からない、この世の中だ。“持ち物”はできるだけ少ない方がいい。もちろん、すべてのヒトにこれが当てはまるわけではないが、そういった選択肢も「アリ」ということだ。自らを犠牲にしてまで、ヒトが愛を捧げる対象「子供」も、当然、この中に含まれるーー

 

 

こだま著【夫のちんぽが入らない】を読んだ。

迷惑コメント防止に「ちんぽ」を禁止ワードに設定している方もおられるだろう。まったく、ブロガー泣かせのタイトル‥。私も、どんな顔をしてこれを書店員に差し出せば良いか、ちょっと困った。

当初、“妊活”に励んでいる新婚夫婦のエッセイか何かと思い、「よくアリガチなもの」と高をくくっていた。それでも本書を手に取った理由は、なにより私自身がちんぽを“入れられない”から。あまりにキャッチーなタイトルだったのである。

 

自分でいうのもなんだが、色男な私に、そういった誘惑は数多ある。しかし、 とりわけ年齢が一回り近くも離れた異性に対しては、最近、自信が失くなってきた。ヤリたくても、心にカラダが追い付いてこないのだ。地球上にいるすべての生物がいずれ直面する、悩ましき老化現象の真っ只中。

精力に満ちたヤリたい盛りのオンナを満足させてあげることもできない私のちんぽは、もはや無用の産物‥。こちらはいいにしても、生殖器としての機能を果たさない、ちんぽが入らない男とは、女の人の目線で一体どう映るのか‥‥。参考にしたく、読み進めたのが、次第にそんなコトどうでもよくなった。

 

セックスだけがすべてじゃあない。結婚し、子供を持たなくても(持てなくても)、幸せのカタチはある。今を生きる私たちの「愛」の在り方を、私は本書を通じて、学ばせてもらった気分だ。

 

 

夫のちんぽが入らない

 

 

ぶっ飛んだタイトルとは裏腹に、意外と“社会派”な面も持ち合わせる。以前、教師だったという著者が生徒との向き合い方に苦悩していた日々。現場で直面する様々な困難に対し、病んだ描写も多く見受けられた。そんなマジメだった先生が、セックス依存に陥っていく衝撃。

ただ、私が本当に驚いたのは、著者の 文章能力の高さである。イジメ問題も、見知らぬ男とのセックスも、序章の初彼氏とエッチができなかった哀しみですらも、抜群の比喩を用い、見事に“笑い”へ転化させている。したがって内容は、明らかにネガティブなものなのに、不思議と暗さは感じさせない。

 

たとえば、夫以外の男とヤリまってくていた、もっとも精神が病んでいたころの教師時代の話....

 

「とにかくもう学校や家には帰りたくない」なんて尾崎の歌詞が、二十六歳で教師で既婚の自分に、ひどく重みを持って響いていることが滑稽に思えた

 

これには尾崎ファンの私もおもわず唸った。かと思えば元教師らしく、知性の欠片を感じさせるような文章もある....

  

この年の血の滲む思いをしたのが、私たちの最後となった。翌年からは宿に宿泊しても交わることはなくなった。どちらから言ったわけでもないけれど、手や口ですることも、身体に触れることも一切なくなった。すべての性活動が終了した。

私たちの性は網走監獄の鉄格子の奥に置いてきた。木目の剥げた床、申し訳程度に敷かれた藁。その寒々しい独房に、これまでの思いを放り込み、鍵をかけてきたのだ

 

 

ユーモラスでいて、軽快な文体。こんなに“巧い”文章を見たのは、いつ以来だろうか。

上記のとおり、全体を通じ、「営み」の部分についてもアケスケに綴られているが、変なヤラしさや、生々しさ感はない。むしろ、愉しい。

身体的な理由から、最終的に子供を持つことを諦めた彼女。本当のところは、男の自分には解らないけれど、たしかなことはひとつだ。学生時代のころから付き合っていた夫とは、強固な愛で結ばれていた。

 

セックスも、子供もない。緩やかな時のなかで流れる、穏やかな愛のカタチを、私は知った。突飛なこだま氏の行動やちんぽといった描写の仕方などに、だいぶ賛否両論あったようだが、彼女自身が幸せと思えるなら、それでいいのではないか。

 

「今を生きろ」は、冒頭記した、高校教師の浅海が真っ先に生徒たちに説いた言葉。今を、強く生きている彼女にも、相応しい言葉のような気がしている。

 

 

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