【もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら】なる本が、話題を集めているようだ。
対象の“文豪”ひとりにつき、1ページから2ページと、パラパラと読める内容のもので、立ち読みで済ませた。本屋・作家とも、有り難くないお客で申し訳ない(苦笑)
「文体」を真似て、いかにもその作家が書いているように見せている。‥つまりパロディの態であって、発想は至極ネット的。しかし、さすがに売れているだけあって、たしかに各々のクオリティは、高かった。
個人的には太宰治の“女々しさ”や、星野源の“つかみどころ”のない文章、尾崎豊の【15の夜】風?なカップ麺の作り方などが◎。誰もが知る文豪たち以外にも「取扱説明書」であったり、スクープ記事を飛ばした際の「週刊文春」風味であったりと、多種多様なラインナップで、まさに“アイディアの勝利”といって良いだろう。ゆくゆくは「カップ麺」以外のバージョンも発刊されるのではないか。
おそらく、本書が「元祖」なのであって、誰か別の人がコレと同じことをやろうとしても、もう売れることはない。したがって、真似しようとも‥真似したいとも思わないのであるが、ここには一般の?有名ブロガーと思しき方の文体も、真似られていた。
‥全般を通じての感想として、逆に、自分も“モノマネされる”くらいの書き手になりたいなと思った次第である。普段、モノマネされる歌手も、実はけっこう“栄誉”に感じていたりするのではなかろうか。そちら側の人間に、いつか自分もなりたい。
‥そういえば趣意は若干違うけれど、以前、コレと似た文章を書いていたのを思い出した。本のようなタイトルを名づけるならば【もし鶴岡慎也がオンナだったら】。
なんのこっちゃ?と思われる方に、軽くご説明しておくと、ダルビッシュ有(現ドジャース)と鶴岡慎也(現福岡ソフトバンク)が北海道日本ハムファイターズに在籍していた時代‥ふたりはよくバッテリーを組んでいた。文字どおり、捕手・鶴岡はダルビッシュにとっての「恋女房」であったわけだ。
18.44メートルと隔てて交わされる両者のやりとりが、これまた本当の息のあった夫婦のようで面白おかしく、私はその鶴岡を、いっそ妻《オンナ》に見立てた。“マスク越しの視点”でみたダルビッシュという、当時書いた文章を今回、せっかくだから「再録」してみたい。
※注釈:この年、ダルビッシュのローテが土曜に組み込まれていた。ポエム風味?
毎週、土曜日が来ることが楽しみでたまらない。
1週間に1度、大好きなカレに会えるから‥‥
毎回、色々な一面をのぞかせてくれるカレ‥‥
今日はその土曜日♪
帰り際‥‥ぜんぶ私のせいにしてしまうなんてどういうコト?
だって私のサインにOKしたのはアナタじゃない?
ウフ。すごくカッコイイのに、でもちょっとお茶目なカレ。
カレの名は‥
YU DARVISH!!
100イニング以上放って防御率1.50なんて、かつて私が夢中になってやっていたゲームの中の世界。ほんと素敵だわ。
完封は逃したけど、今日あなたのもっとも良かったところは、なんといっても
無四球!ノーフォアボール♪
防御率1点台のアナタにこんなことを言うのも酷だけれど、だって得点を許す時はたいがい、フォアボール絡みが多かったじゃない?
よっぽどのことがない限り、連打はないんだから大丈夫よ!
お願い。もっと私を信じて。
それより!
いつも私のことはあまり褒めてくれないけれど、今日の私のバッティングの方は、どうだったっかしら?
綺麗な流し打ちだったでしょ♪
これもそれもすべて、愛するチームと大好きなあなたのため。
あなたの熱いハートとほとばしる剛球は、このミットでずーっとずっと受け止めいくわ。
まだまだ未熟者な私だけど、これからも末長くよろしくね。
あなたの恋女房・TSURUより
この「鶴バージョン」はまだ他にもあるのだが、今回はこの程度に留めておきたい。いきなり訪れた方には、少々身体に毒だ(笑)
だが、ふと私は思った。これは、たぶん誰にも真似できないだろう。いや、真似したいとも誰も思わないだろう。真似できない・されない文豪の方が、実はもっと凄いのではないかーー
私はそう自らに言い聞かせ、ペンを置くのであった。