タイトルがちょっと嘉門達夫チックだ.....
昨年、日本映画界に旋風を巻き起こした【君の名は。】。朝目覚めたら、男子高校生が見知らぬ女の子になっていたという‥ファンタジーといえばいいのかなんなのか。結果的にいって「時空」を超えた男女入れ替わりであった。
しかし、この手の物語も“進化”したものである。以前は階段から落ちたり(転校生)、落雷にあったり(放課後)、あるいは「いれかえロープ」なる“ひみつ道具”を使ったりだとか、いわば目に見えて解かる入れ替わりが多かった。【君の名は。】のように、もし何の前触れもなく異性になっていたら、普通は、もっとパニックに陥るにちがいない。
いずれにせよ“一時的”なものが多く、前出の作品も最後は元のカラダに戻って平和的に解決している。未来と過去を行き来した【君の名は。】だけ、定義が少々ちがう気もするが、やはり最後は、瀧も三葉も元通りになっている。
そう、それがまず“前提”にあるのだ。だから、女の子になりたかった「のび太」は例外として、入れ替わった者は皆、とりあえず元のカラダに戻ろうと思考錯誤する描写が見られる。そういう努力をしないヤツは、新しいカラダの居心地がよほどいいのか、元のカラダが嫌いかの、どちらかである。
趣旨は異なるけれど「ボディチェンジ」が十八番だった【ドラゴンボール】、ギニュー隊長は、タチの悪いタイプの典型といっていいだろう。元のカラダに戻ることなんてサラサラ考えていないから、チェンジ前に自傷行為に及んだ。
あげく、チェンジした悟空のカラダが使えないと解ると、さらに今度はベジータとチェンジしようとした。無責任もいいところである。無責任すぎるギニューによって、ドラゴンボールの世界は、ますます混迷を極める恐れがあったのだ。
◇貸したカラダはきちんとお返しましょう?
「世にも奇妙な物語」の【おばあちゃん】に登場する婆さんも、質の悪さではギニューにまったく引けを取らない。
ある目的を遂行するため、嫌がる孫にカラダの交換を願い出る。それでも余命幾許もない病床のおばあちゃんのためにと、孫はこれを承諾。約束の時間までに帰ってくることを条件とした。
途中トラブルにも見舞われ、約束の時間‥すなわちおばあちゃんの肉体が死んでしまうまで、あとわずか。病院に急ぐ、孫の身体のおばあちゃん‥‥がんばれ!!
ギリ間に合った。おばあちゃんは無事目的を果たせたし、元通りになって、これで一件落着‥‥と思いきや、この婆さん
カラダ返さねーし
感動話と見せかけての、まさかのブラック・オチである。
これが何を意味するかというと、おばあちゃんは孫(の魂)を見殺しにしたのである。土壇場で命が惜しくなったのだろうか‥。ともあれ、こうなった以上「無垢な孫の心を利用して体を交換させた、そもそも性悪なババァ」という図式ができあがってしまう。
“カラダを返さない”ラストを見たのは、おそらくこのときが初めてだ。ラストシーンでの、いかにもといった感じの「腹黒さ」をみせていた片平なぎさ(成長した孫の姿)も鮮烈な記憶として残っている。
先日話した奇妙ファンの同僚には、“後味の悪さ”ナンバーワンに、とりあえずこの作品を推しておいた。