センテンス・オータム

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世にも奇妙な話.2018 【小説家もの】

オフィス北野から独立するという北野武氏の一報を見かけたとき、当初“たけし流”のギャグなのかと思った。

 

‥どうやら今はその問題も沈静化しつつあるようだが、その北野氏が先日、週刊文春(※1)に「小説」を寄せていた。エッセイの類は何度か目にしたことがあったけれど、氏の小説は初である。週刊誌内の企画?であったにもかかわらず、意外と長編だった。

 

小説家志望の男とペットとして飼っていた犬の話。次第に犬中心の生活になり始めていく男の話を面白おかしく、終わりのほうは、ちょっぴり切ない‥。筆者も以前、犬を飼っていた時期があり、当時を思い出して、しばらく物語の余韻に浸っていた。私個人としては、コメディアンやコメンテーターより「文筆家」としての北野氏のほうが好きかも。

 

 

小説家志望の男、といえば世にも奇妙な物語西島秀俊主演の【過去からの日記】を連想さす。北野氏の小説は本の編集なども手掛け、ライター業も兼務する主人公であったが、こちらは“まったく書けない”小説家、35歳。食っていくために工場でアルバイトをしているというのも、やたらリアルだ。しかも彼の場合、まがりなりにも一度売れた経験があるものだから、その苦悩は色濃くて、まさしく人生の岐路に立たされている。

 

そんな彼が「現代」には存在しない少女と交換日記を始めた。‥時空を超えてメッセージを交わすことのできる、不思議な本のチカラによって。ようやく紡ぐべき「書くこと」を見つけた主人公。病床にあった、今は存在しない少女と“会うために”、行動を起こすーー

 

 

西島秀俊―新世紀のスピリチュアル・アクターズシリーズ (キネ旬ムック―アクターズ・ファイル)

 

 

昨今はあまり見られない、至極美しいストーリーだった。時空を超えて、過去あるいは未来のヒトとメッセージ交換をするとか、文字が浮かび上がってくる描写などは、一昨年大流行した映画【君の名は。】にも通ずるものがある。

しかし、これはなにも創作の世界にかぎった話ではなく、現代を生きる私たちが昔の本や記事を読んだりすることは、その書き手の想いだったり意志を“時空を超えて”知るのと一緒で、ドラマでも触れられる「言葉に出すことの大切さ」を、あらためて知る。極端な話、今こうして綴っている文章も、カタチとして残せば、未来を生きる人たちに届けることもできるのだ。

自分の生き様、在り方だったりを、ヒトは皆「小説家」のごとく、どんな媒体でもいいから是非、発信をしてほしい。それをみて勇気づけられる人が‥たとえ現代にはいなくとも、未来を生きる誰かを救ってあげることができるかもしれない。私も自信を喪失しかけたときは、いつもあの作品をみて“原点回帰”をし、自らを奮い立たせている。

 

 

私小説以外はすべて創作となる小説を書く者は、往々にして奇妙な世界に迷い込みやすい。‥それはそうだろう。頭の中ですべてイチからストーリーを組み立てていくのだから。

以前ここでも触れた映画【シークレットウインドウ】よろしく、狂気な小説家を演じてくれたのが、木村佳乃。タイトル名もズバリ【連載小説】

 

 

risingham.hatenadiary.com

 

 

現実と物語の世界が区別ができなくなる‥といった話なら多方面でよく見受けられるが、これは少々趣がちがって、自らの意志とは別に「もうひとりの自分」を生み出してしまう。‥いわゆる多重人格とかの類で、主人公は物語の中に登場させる人物そのものになってしまっていた、というオチ。ちょっと文字にすると解りづらいかもしれないけれども、イメージとすれば映画のジョニー・デップと一緒。

【連載小説】も木村佳乃目線の巧みな?カメラワークで、終盤まであらゆる含みを持たす。冒頭でも、かなりのヒントが隠されているので「二度見」すると、より解りやすいだろう。

 

この世にごまんといる小説家志望の方々、“のめりこみ過ぎ”にはくれぐれもご注意を。

 

 

《関連》

(※1)週刊文春 2018年 3/29 号 [雑誌]

  

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