センテンス・オータム

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盆休み前SP2【読書記録】ー「少年ジャンプ」黄金のキセキー

「元愛読者」として、今でもジャンプを読んでるやつを見かけると嬉しくなる。震災時の“回し読み”エピソードも心温まったし、知人・友人がジャンプを読んでいると訊けば、率先して尋ねた。『最近のジャンプ、どう?』

 

「情報源」の一人として頼りにしていた彼も、とうとうジャンプの購入を辞めてしまった。魅力を感じる連載が少なくなった‥‥曰く【ワンピース】を読むためだけに毎週買うのがバカらしくなってきたのだと。なるほど、それなら確かにコミックスを買うほうが、はるかに経済的だ。

 

コンビニなどに寄り、中身を覗けるものであれば、私もパラパラとページをめくることはあるが、それこそ【ワンピース】くらいで、個人的に知っているマンガは他にひとつもなかった‥。少年ジャンプ“黄金時代”を知る者とすれば隔世の感である。

 

ひとえに“黄金時代”というが、これは読者各々によって、とらえ方が異なる部分もあるだろう。ただ、目に見えるところで「黄金期」と証するならば、前人未到の部数、653(1995年3・4合併号)を記録した1990年代半ばがピークだ。

‥これがどれだけ凄いかというと、筆者が現在好物とする【週刊文春】の2016年10月からの一年間の総部数が約65万日本雑誌協会調べ)。単純計算をすると、あの頃のジャンプは一週間でその10倍近くの部数を誇っていたことになる。

 

そんな最強ジャンプが、なぜ急激に部数を減らし、当時の見る影もないほどに人気を落としてしまったのか。‥雑誌を含めた本が売れなくなってしまったというのもあるだろうし、実は先に述べた「コミックス」による影響も少なくないのだという。ただし、“この人”の前でジャンプの栄枯盛衰を「バブル」のせい・おかげとしては、絶対にならない。

元編集長からの目線でみた、少年ジャンプ。後藤広喜が送る痛快な書籍を読んだーー

 

 

「少年ジャンプ」 黄金のキセキ

 

 

80年代後半から90年代前半「黄金時代」真っ只中に少年でいた私は、幸せなジャンプ世代であったのかもしれない。今は読まない‥というか見ても知らないマンガばかりなのだけれど、当時は読まない作品のほうが圧倒的に少なかった。ゆえにこの時期に連載されていた作品に触れている項には、人一倍な感慨がある。

当該作品が人気マンガと成りえた理由(ワケ)、制作秘話などがひとつひとつ、実に豊富な文章量で語られている。本の執筆にあたって、きちんとイチから読み返したのか、記憶はいちいち正確・明瞭。そして、どの作品に対しても愛情とリスペクトがある。

 

キン肉マン】は当初さほど人気が出ず、反面【ドクタースランプ】は連載開始早々人気に火が付いた‥等々、実際に傍で“関わってきた者”としての見方、「ならでは」な見解が面白い。

たしかに【キン肉マン】といい、長年ジャンプを支えてきた【ドラゴンボール】もそうだった。初期の頃は“ギャグ路線”が強かったけれど、次第にシリアスな内容なものへと変遷していく。若年層の多い読者ニーズに応えるには、戦いがあってそれに「勝利」することの物語性の重要さを、あらためて説く後藤氏。彼は当然、作家とも交流があった。たとえば鳥山明について.....

 

宇宙孤児となったふたりは、やがて妻子を持ち、地球に根を下ろすに至る。悟空とチチは結婚し、悟飯、悟天のふたりの男の子をもうけた。ベジータも天才女性科学者ブルマと結ばれ、トランクスを授かった。【Dr.スランプ】以来流れている結婚願望・家族志向はここでも生きている

「第5章 黄金期ー六五三万部発行を達成するまで」より

 

世界広しとはいえ、こんな見方を同マンガにしていたのは著者くらいだと思う。【キャプテン翼】に至っては......

 

わたしは、こんなことを思う。後発の週刊少年漫画誌「少年ジャンプ」を読んで、その若い情熱の力で、「少年ジャンプ」を少年漫画誌のトップに押し上げた現実と、この日本サッカーのたどってきた過程のなんと似ていることかと‥‥。まさに「時代が動く」とは、このようなことを言うのだろうと‥‥

「第5章 黄金期ー六五三万部発行を達成するまで」より

 

と、ジャンプの歴史を現代の日本サッカー界と擬えたりもする。この【キャプテン翼】にしかり、私自身漠然としか記憶していない【北斗の拳】【シティハンター】といった漫画も、裏側にあった背景を改めて知って、また見返したくなった。闘いの描写が鮮烈でインパクト大だったけれども【北斗の拳】の世界設定が、まさか、そのようなカタチではあったとは‥‥。なにか、オトナになった今こそ観たい気がする。

 

もちろん本宮ひろ志永井豪ら、創成期を支えてきた作家の話題についてもてんこ盛り。【アストロ球団】の中島徳博、晩年について書かれた章などはホロリとさせられる‥。

ジャンプをたとえわずかな期間でも読んだことのある者が本書を手に取れば「少年ジャンプ」を愛せずにいられなくなる。かつては、やはり毎週買っていた私だから、体のどこかで“習慣”が抜けきれず、なんとなく放っておけなくなってしまう。でも、手に取るほどでもなくて、またいつものように、こうヒトに尋ねてしまうのだ。

 

『最近のジャンプ、どう?』

 

 

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