徳島インディゴソックス御中、2019年総合優勝おめでとう――
インディゴソックスといえば少し前に、こういった記事をみかけた。あの「ミラバル」が臨時投手コーチ就任?!
‥加入してすぐチームを優勝に導くとは、この男、なかなか持っている。たしかに抑えと先発で活躍。北海道移転当初はエース格で開幕投手も務めた。引き出しを多く持っている点においては、指導者向きなのかも知れない。
日本球界に6年もいれば、それこそエピソードには事欠かないわけだけど、とりわけ傑作だったのは2002年、千葉での「完全試合・未遂」、あのゲーム。先発し、8回終了までマリーンズ打線をパーフェクトに抑え込むも、最終回に走者を許して夢潰えたという‥‥まぁ言ってみれば“あるある”な、ただそれだけの話なのだが、Wikipediaにも載っていない、おもしろい“逸話”があった。
ミラバルの快投を受けて、他カードを中継していたラジオ局が巨人・槙原寛己以来となる「快挙」を伝えようと、急きょ千葉からの放送に切り替えた。今は分からないけれども、こういう“臨機応変な対応”を、当時のラジオはよくやってくれた。
あと3人で完全試合達成。ファイターズ贔屓の私とすれば「渡りに船」だったわけで、まさに至高のシチュエーションである。
ところが、いきなり先頭の代打・吉鶴憲治にコツンと当てられ、ヒット‥。あまりにもあっけない幕切れにズッコケてしまったのは、おそらく、私だけではなかったはず。夢を見る間もなかった。
優勝の使者であるかのごとくタイミングで、インディゴソックスに加入したミラバル。あの時はまだ、ただの間の悪い外国人であった。
ついでに当日のデータを追ってみると、両チームの出場メンバーで今も現役でいるのは福浦和也と實松一成、ふたりだけ。實松はミラバルとバッテリーを組み、快投をアシストしていた。あれから17年の歳月が流れ......
ZOZOマリンスタジアムで福浦の引退試合があった同日、隣の鎌ヶ谷では實松一成の引退試合も行われていた。あらためてトレード先の巨人に11年間もいられるとは正直思わなかったし、2017年“12年ぶりの”古巣復帰は、もっとサプライズだった。ふたたび、あの愛すべき「サネ」をファイターズで拝めることになろうとは‥‥と。
「打てないキャッチャー」を、まるで象徴していたような選手。同時期に高橋信二という打てるキャッチャーがいた不運。しかし「スラッガー」としての資質は、サネの方があったと、私は今でも信じて疑わない。実際、エグい打球を飛ばしていたのを何度も観た。‥残念ながら、その“確率”が他者より低かったわけだが。
サネの翌年入団した甲子園のスター、正田樹との「黄金バッテリー」は、当時の数少ない希望だった。ファイターズが強くなっていた頃、その中心に彼らはいなかった。次第に“北海道色”が濃くなっていくなか、東京時代からのファンには若干、それが心名残で寂しく映った。
とりあえずサネは帰ってきてくれた。そりゃ12年も経てば老けたけれど、髭を剃ったらまだまだ若い。あの頃とほとんど変わらない。そして、相変わらずドッシリとした「スラッガー」の雰囲気を漂わせていた。半ば不完全燃焼に終わったファイターズのサネを最後に見届けることができ、私のなかで一つの区切りはつけられた。もう悔いはない。