約8カ月ぶりの世にも奇妙な物語........
放送時期が遅れ「夏の特別編」と銘打たれたのも異例なら、エンディングで次回「秋の特別編」の予告を流すというのも、番組史上初めてである。‥その予告については申し訳ないが、あまり期待できなかった。
概要を眺めただけでそんなことを言うのもナンだけれど、でも今回の「夏特」が、例年にないくらい素晴らしい出来栄え。コレを超えるのは、正直なかなか難しいのではないか? そう思われる。
4作品それぞれに見応えがあり、(コロナ禍によって)延びた時間で平時よりも、いっそう磨きをかけられたのだろう。さっそく振り返っていきたい。
◇【3っの願い】
当作品は「長編」だった。且つあまり過去の奇妙では観たことのないタッチで描かれていて、ストーリーが抜群によかった。妻が忽然と姿を消してしまい、防犯カメラは謎の故障‥‥何やら冒頭からして雰囲気たっぷり。そこから、いささかファンタジックな展開になり、それでいて緊迫感もあって終始目が離せなかった。
ただ事前にストーリーテラーのタモさんが少しヒントを与えてくれていた。よって主人公が金持ちな理由と美しい妻の正体は、何となく察しが付いた(傍目には明らかに金目当てのオンナで印象は最悪だったが)。となるとタイトルにもある「3っめ」の願いはいったい何なのか‥‥ラストまで巧~く引っ張った感じ。このラストの迎え方に、だいぶ賛否はありそうだけれど個人的には「賛」だ。
総じて今回はキャスティングが秀逸だったが、それでも当作品が随一だろう。主演の伊藤英明と魔人役の滝藤賢一。そして、彼らと比べ知名度では劣る、渋い刑事に扮した松角洋平の演技にも魅せられた。‥この役者はもっと評価されるべきだろう。作品自体の評価は、文句なし【A】判定だ。
◇【しみ】
大体ホラー系統で占められるトップバッターに持ってきたのは、広瀬アリスが主人公の【しみ】。
少し勘の良い人および番組のリピーターなら、序盤に在ったワンシーンでその後の展開が読めてしまう。いつかの竹内結子的(【箱】)な、この「落とし方」は、できればもう見たくなかった。リアルに怖いから! 偶然、近ごろ「孤独死」にまつわる記事や本に触れる機会が多かった筆者は余計である(失笑)
にしても、それを「しみ」と見なしてしまうのか‥‥。いくら奇妙作品とはいえ、今回ばかりはちょっとムリがあったんでないかい? しかし、「ホラー担当」としては十分にその役割を果たしてくれたと感じるので 【B】評価に相当。
宮川一朗太の嫁ではなくてよかったです?
(C)amazon
◇【燃えない親父】
地味によかった。家族愛にちなんだ人間ドラマを短い時間で展開しつつ、コメディな要素も随所にあり、予想に反して、まさかのハッピーエンド?ときた。田中みな実の写真集を小ネタに用いたセンス、ゲイの男が登場してくる意外性にも好評価。視聴者方の「ツボ」をつかんだにちがいない。
なお番組では具体的に明かされなかったが「棺」という代物は、おそらく皆さまが思っている以上に値が張る。作品のようなこと(遺体が燃えない)が現実に起きたら遺族はたまらない‥‥。【B】
◇【配信者】
SNSに関する当作品。白洲迅演じる動画配信者は作中、炎上気味にもなるのだが、よくぞ今、このタイミングで「テラス」の一件があった、当のフジが放映できたと思う。
他の作品で時間を取ったせいなのか、急造だったのかは分からないけれども、わりとコンパクトに収まった作品。動画絡みの、類似な作品が近年多いなかでは、まぁ悪くもない出来だった。平々凡々なオチはともかく、一定の「恐怖」は視聴者に植え付けられたのではないだろうか。【C】
「女優の食べかけ菓子」配信にちょっぴり興奮。不覚にも
(C)amazon
‥‥と、全体的に当該「夏の特別編」は愉しめた。とりわけ【3っの願い】のチカラが大きく、近年の奇妙作品では一番だったかもしれない。こうした先が読みづらい作品に、また出合えたら嬉しい。時間を置かずに。
それでは告知のあった「秋の特別編」視聴後に、ふたたびお会いしましょう。