『キャッチャーは(打率).240打てれば十分』
いつの試合で、解説者が誰だったか、あいにく失念してしまったのだけれど、そんな発言をしていた。
‥思い返せば、10年以上にわたってマスクをかぶり、それを見続けてきた伊東勤(西武)と田村藤夫(日本ハム)が、毎シーズンその辺りをうろついていた憶えがある。
事実、調べてみたら伊東のプロ通算打率が.247、田村が同.252。両者はチームの「一枚看板」として、ほぼ休まずに試合に出ていたのだから、“十分”な数字ということになろう。
これが2000年前後くらいから古田敦也や城島健司、阿部慎之助といった、やたらと「打つ」キャッチャーが登場し始める。しかも、彼らは一様にディフェンス面も長けていた。打てるキャッチャーなら過去にも大勢いたが、守りも‥となると「?」がつく選手が、どちらかといえば多かったので、3名は、ほぼ同時期に現れた“突然変異”と見てもいいだろう。
話を現代に戻すと、私はファイターズが誇る「二枚看板」に、今ゾッコンなのである。そのうちの一人、市川友也(30)。彼を見ていると、特に昨年、深刻な「捕手難」に陥ってしまった、あの巨人が、よくぞ譲ってくれたと‥‥。
打撃も2014年が、AV.263でHR2。2015年も、AV.226でHR2、手術した影響で43試合の出場にとどまりながら、12打点をマークするなど、随所で勝負強さも光った。及第点どころか、現代の捕手とすれば“十分”すぎるくらいの数字。
リードも、大野奨太に比べると「速球主体」の傾向が強いように思う。これは好みによるが“投手ウケ”するのは、市川の方かもしれない。投手は皆‥なんだかんだで、自慢のストレートを投じたいのだろうし。
したがって大谷翔平は、市川と組ませてみてはどうだろう。昨年、両者の相性はよかったはずなのに、今年はなぜか大野と組ませている。開幕戦の初回、勝負所で立て続けに「フォーク」を選択した大野‥‥。市川だったら、どうだったろうか。あるいは今頃、大谷の成績はまったく違ったものになっていたかも知れない。ここまでの悪い“流れ”を変える意味でも、市川との「再結成」を希望。
市川の盗塁阻止率が、26日現在でリーグNo1。率は驚異の5割超えだ。その26日の東北楽天戦。3回、俊足・聖沢のスチールをストライク送球で刺した強肩。捕ってからの早さ、正確なコントロールといい、あまりにすばらしく、私はウットリしてしまった。機会があれば是非ご覧になっていただきたい。
市川の好アシストと好リードによって、今期はやくも3勝目に手にした有原航平(23
)。やっぱりモノがちがう....
デビュー戦で見た衝撃、今でも忘れない。有原の投球は喩えるなら「人間ピッチングマシーン」だ。よく制球された大谷と双璧のスピードボールが、コーナーへビシビシと決まる。ストレートの軌道が、まるで一本の線を引いたようにきれいで美しい‥。とりわけ右打者への、外角低めのストレートは芸術的である。
病み上がりで心配したが、球威も申し分なしで、むしろ故障前より力強いボールを放っているように感じた。‥今年は15勝はいける。大谷と「Wエース」結成で、チームを上位に導いてほしい。
右腕2人による「二本柱」といえば、往年の江川卓・西本聖を思い出すが、タイプ的には「W江川」といったところか。‥そういえば、有原のストレートは江川の軌道にも、少し似ている。