センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

「石井ちゃん」登場に目を潤ませる人

宮西尚生が通算500試合登板達成....

 

 

「500登板」という記録自体は、達成者がわりと多くいる。しかし、その半数近くが先発・抑えの大車輪、中4日先発が当たり前の時代であった昭和の猛者たちによるもので、この宮西のように、抑えだけで到達した投手は数えるほどだ。

救援専属でコンスタントに成績を残し続けることが、いかに難しいか‥そうした数字を見ても頷ける。

あれはプロ初登板のときだ。緊張の一軍初マウンドを無失点で切り抜けた宮西。ベンチ内で彼をハグする吉井投手コーチとの姿が、まるで親子のように映って、とても印象的な記憶として残っている。

あれから9年‥‥驚異的なペースで「500」にまで到達。無論、31歳の宮西にとっては単なる「通過点」に過ぎないであろう。

 

 

27日の埼玉西武戦は先発の吉川光夫から石井裕也、宮西、武田久の継投。栗山政権となって初優勝となった2012年版「黄金リレー」の再現である。締めのはずの武田は‥こけてしまったが、彼にしても昨年まで522試合に登板。ここ10年もの間、宮西・武田コンビで一体いくつの白星をファイターズは積み上げてきたのだろうか。

 

 

『石井ちゃん』

 

親しみを込めて、彼をそう呼ぶ監督が微笑ましかった。同日、地味ながらも、節目のプロ通算300試合登板を飾った石井裕也。‥キャリアスタートは中日だが、私は石井を、選手によっては、他の生え抜き以上に好いている。大の、「石井ちゃん」ファンなのだ。

 

難聴というハンデを乗り越えて‥とか、そうした気取ったことをここで書くつもりはない。だが毎試合、彼が登板するたび、私は感動を覚える。石井の投球が、ヒリヒリと胸を熱くさせるのだ。一体、なぜなのか。そのヒントがある書籍に隠されていた。

 

 

サイレントK 沈黙のマウンド―野球に生きる横浜商工難聴の左腕エース

 

 

本書は、甲子園出場を目指していた横浜商工時代の心情を主として綴られている。この中に、本の制作にも携わった鴇田修一氏による【石井裕也くんについて語る】という文章があり、こう書かれていた。

 

 

裕也にとっての野球は、自分を雄弁に語るための手段なのかもしれません。そんな裕也だからこそ、私たちは大きな希望と夢を抱くのです

 

ハートがえぐられた。そうか‥そうだったのか。彼から特別な「言葉」は発せられなくとも、すべての想いを、その白いボールに乗せていた。投球に込めた、石井からのメッセージ‥‥それを”受け取って”いたのは、キャッチャーだけではなかった。

 

 私は、石井からの“メッセージ”をもっと、もっと聴いてみたくなる。同じ障害を抱える方に、勇気や希望を与えているかもしれないが、自分はちがう。彼に「感動」をもらっている。これこそが石井裕也という投手に惹かれる、唯一無二な魅力であるといえよう。