センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

「粘り」の先に見える視界

ふと気になって小坂誠の「年度別本塁打数」を調べてみた。

 

 

ご存知、現北海道日本ハムファイターズ、二軍内野守備コーチ。現役時代は千葉ロッテなどで「名遊撃手」として鳴らした。身長167センチ、体重は公表63キロ‥。一般人と変わらないくらいの、プロスポーツ選手としては、かなり小柄の部類にはいるが、意外にも通算で19本ものアーチをかっ飛ばしていた。

その好守ぶりから、どうしても「守備の人」のイメージが根づよかったのだけれども、なかなか長打力も併せもっていたようである。

 

 

小坂と比べ、プロ野球の世界では明らかに体格面で有利と思われる8年目の中島卓也(S176.T73)は、今日まで1本の本塁打も放っていない。それどころか、高校時代も公式戦では「0」、練習試合で1本放ったきりなのだそう。(※1)

‥よくぞこういった選手がプロの世界に入れたものだと感心するとともに、彼を見出した岩井隆之スカウトの眼力にも驚きを隠せない。中島卓は、今やバリバリの一軍選手である。

 

 

選球眼のよさと、西川遥輝の不調などで、一時期はトップバッターを担っていた。しかし、開幕時も そうであったように、指揮官も理想は中島卓に9番、あるいは2番あたりを任せたいようである。いわゆる「繋ぎ」を最重要として求められる打順。

「核弾頭」といった言葉があるくらいで、たしかにトップは陽岱鋼や西川のような、ある程度長打が見込める打者に任せてみたい‥というのが、その根本にはあるはず。したがって長年にわたり、一番を打っていた小坂は、まさに“うってつけ”と云える存在であったわけだ。

 

だが一方で、こんな考え方もできるだろう。本当の意味で中島らしさが活かせるのは、トップよりも“ラスト”。

‥当初は、正直いうと「打」にかんする彼の能力について、私は懐疑的だった。代名詞ともいえるようになった“粘り”の打撃に対し「仕留められない」という印象が拭えなかったのである。甘い球をなかなか仕留めきれずに、ファウルにしてしまう‥‥。事実、10球以上粘った打席では10日現在、中島卓は今季ノーヒットだった。

 

いくら粘ったところで、最終的に凡打なら、無意味なのではないかーー

 

「結果」だけを見ていたのだ。私は、いかに大事なその「過程」を、まったく見ていなかった。

 

ねば~る君 ぬいぐるみ S

投手に球数を多く投げさせて、体力を消耗させる。たとえ自らは凡打に終わったとしても、後続の打者のために、ひいてはチーム全体のために「自己犠牲」の精神を働かせる。‥こう考えると、逆に甘い球をファウルにさせる“技術力”の高さも偉大。

だが、これよりも筆者が中島卓に感心するのは、仮に「0-2」と打者不利なカウントとなっても、そこから何球もカットしながら、最終的に四球にまで持っていけることだ。“粘れる”が立派な才能であることに気づけたのは、まぎれもない、彼のおかげなのである。

 

 

6日の福岡ソフトバンク戦。千賀滉大から13球も粘ったすえに、出塁。走者を気にしながら投じたストレートを、次の大谷翔平が狙いすましてスタンドまで運びさる‥‥。今季敗けなしだった剛腕は、中島卓ひとりよって完全に投球のリズムを狂わされ、ペースを乱された。

目を凝らしてみれば、打率2割5分台ながら出塁率.353(同日現在)。中島卓は打者としても、きちんと“機能”していた。打率には表れない、毎打席の過程。これを見ずにいた‥本塁打や安打の数ばかりではない、彼の本当の凄さを最近まで気づけずにいた私は、とんだ愚か者である。

 

 

≪参考≫

(※1)中島卓也メッセージBOOK -思いは届く- (メッセージBOOKシリーズ)