反町隆史が好きだった。
目指すべき方向は、まちがいなくアソコではなかった。私は「演者」としての、反町に惹かれていたのである。
毎年夏に聴きたくなる【Forever】を引っ提げ、初出場した紅白では、司会の中居正広にこう紹介されていた。
ワイルド&クール&セクシー
まさに「モテる男」の条件を満たすトリプルスリー。一見そんな容姿をした反町が、ドラマの世界では“チャラ男”のような三枚目を演じた。大学卒業まで童貞を貫きとおした【GTO】など、その最たるもので、彼の持つこうした「ギャップ性」に、筆者を含め、人は魅せられていたのである。
日テレ系列【ドリーム☆アゲイン】は、なかでも異色だった。球団が全面協力し、ジャイアンツのユニフォームを着させられた身長180センチ超えの反町は、さすがに画になっていた。しかし、これよりも‥ドラマの最終盤に、驚きの展開が待っていたのだ。
◆40歳を目前にした男の入団テスト合格
“作り話”といわれてしまえばそれまでだが、野球好きの私には「まさか」である。イイ線までいくが、結局ダメだったという、ありがちなパターンかと思いきや、反町演ずる男(ちょっと厄介なのだが、肉体は別人で精神が元プロ野球選手という、文字にすると難解な設定。詳細はネットで確認を)が、プロの入団テストをパスしてしまった。
ドラフトでも、最年長指名はたしか30歳だったはず。四十前の中年が、中途でジャイアンツ入りである。私が編成でも、野球好きのオッサンよりは若く、ピチピチとした稲村亜美の方を、獲る。
‥最終的に入団はしなかったが、でも『一度くらい実際にこんなコトがあったら面白いなぁ』と、妙な目線で見ていたのを思い出す。
あれから9年‥‥。【ドリーム☆アゲイン】を地で行くような奇跡が、現実世界で起こった。杉浦双亮の愛媛マンダリンパイレーツ入りである。
マイク・イースラー等の野球物まねでおなじみの芸人。トライアウトをパスした彼は、今年40歳だ。独立リーグとはいえ、野球をすることで給料をもらっているのだから、プロといっても差し支えないだろう。
先日、そんな彼が先発登板を果たし、5回途中まで無安打無失点に抑える「快投」を見せたというのだ。勝利投手にはなれなかったが、チームの勝利に貢献してお立ち台にもあがった‥‥。
話題づくりでも何でもない。杉浦双亮がパイレーツの「戦力」として機能していた事実に、私はいたく感動をした。入団後はゼロから這い上がって、自ら先発の座をつかみ取り、さらに「結果」まで残したそのプロセスは、それこそドラマのようである。
杉浦氏が夢をみさせてくれた。人は、あるいは本当に奇跡というものを起こせるのかもしれない。何も野球に限ったことではないが、あきらめずに、年齢も関係なく、ひたすらに追い続けていれば‥‥。ドリーム・アゲイン☆