シーズンの終盤まで、福岡ソフトバンクと激しい優勝争い‥‥クライマックスシリーズで今月もふたたび両チームによる激闘が繰り広げられ、例年であれば私にとって重大な関心事であるドラフト会議にまで、今年は、なかなか目が向かなかった。
それでも必要最低限な情報は集めている。ハムにかぎらず、当日まで誰を指名するか、他球団の動向をみながら各チームの編成は頭を悩ませているようだが、田中正義(創価大)の“一番人気”は変わらない模様。
昨年から、専門誌などで彼のことは散々取り上げられていたし、こぞって絶賛していたから『ぜひハムに』と、私も田中の獲得を熱望していた。しかし、肩の故障によって、ひと頃より、人気は下落傾向‥。一時は指名まちがいなしとまで云われたハムにも、まったくといっていいほど、夏以降は動きが見られなくなった。
はたして、これはドラフト巧者の「ポーズ」なのだろうか
事実かは定かでないが、一部の紙面で田中も「ハム志望」という情報も得ている‥。肩の故障はもちろん本当だろうけれど、通常なら指名に際し不利になりかねないケガを“あえて”公表し、あらかじめ何球団かを撤退させたうえで、素知らぬ顔をしたハムが、結局は狙いにいくのでないか‥‥そうした、にわかには信じがたい読みもなされていた。
4年前には花巻東・大谷翔平の「囲い込み」も噂されたほどの日ハム。どうやらきな臭い印象を、ことドラフトにおいては周囲に持たれてしまっているようだ。
‥だが、田中獲得を望みつつ、一方で私は高校生投手の方にハムが“寝返った”可能性もあると見ている。その筆頭は、
作新学院の今井達也
今夏の甲子園優勝投手。場数を踏んだ田中とちがい、即戦力とはいかないだろうが、魅力的な素材であるのは確かだ。元来、優勝投手といった知名度抜群のスターを好物としている球団であるゆえ、双璧の寺島尚輝や高橋昂也の“左腕”にはいかずに、今井達也に行く理由‥。それが、まさに「甲子園優勝投手」であるからに他ならない。
彼は、上記の投手らに比べ、知名度の点で劣りながら、今年の夏に一気にその才能を開かせた。松坂大輔や島袋洋奨のケースと異なり、全国的にそこまで有名ではなかった球児が「一夏」を経験を得て、一大スターとなった優勝投手‥‥つまり、今井とよく似た道を辿った選手がハムに、新旧二人もいたのだ。
現在も愛媛で現役を続けている正田は、1999年夏の甲子園を制している。前年の松坂のように騒がれていた存在ではなく、いわば「無印」な投手であった彼も、あの夏、アレヨアレヨという間に勝ち進んだ印象が強かった。
当時、圧倒的な存在感を示していた田中将大を押しのけ、一夏で天地がひっくり返るほどのスターとなった斎藤も同様‥。ともに「甲子園優勝投手」の称号を手にし、斎藤は大学を経て、その後ドラフト1位で日本ハムに入団した。
ここまでの、ドラフト前までの経緯は今井と酷似する。さらに三者が、野球留学が盛んな昨今においては珍しく、北関東の出身者(今井が栃木で、正田と斎藤が群馬)という点にも、筆者は着目してみた。“運命的”な観点でいうなら、今井のハム入りにシグナルは確実に向いている‥‥。
今年のドラフトは一体どういった結末を迎えるのであろうか。ますます興味は尽きない。
なお、抽選となった場合、今年は栗山監督自ら臨む模様だ。
‥3年前にクジを外しまくり、 嫌な予感をしているファンも多いと思うが、ペナントレースの勢いをドラフトにも持ち込みたい。終盤戦の神がかりな采配ぶりをみるかぎり、今の指揮官はノッている。2016年こそは、一味も二味もちがう、スーツ姿の栗山英樹を拝めるはずだ。
昨年も抽選を2度外してしまったけれど(監督ではないが)、全体的には満足している。ドライチ・上原健太は戦力にならなかったが、ドラ2の加藤貴之がそれを補って余りある活躍を見せ、ドラ3の井口和朋も貴重な中継ぎとして機能。「即戦力」としての期待に、見事応えてみせた。
とりわけ加藤はすばらしい。この投手は見るたびによくなっていく。最終登板となった9月26日のオリックス戦。5回の三者連続三振は圧巻で、球がよくキレていた。来シーズンは、先発の柱となってくれるだろう(ちなみに15日夜現在、加藤が投げた試合で勝ち、日本シリーズ進出すると予測)。
クジを外したことより、将来性から「即戦力」重視へとシフトした結果、彼らのような投手と縁があったわけだから、ドラフトはどう転ぶか本当に判らない。だから、面白い。プロ野球ファンにとっては、到底「他人事」では済まされないのだ。