胃がキリキリと痛んだ。
それもそのはず。チャンスをつくっては、凡打の繰り返し。‥野球ファンにとって、いちばんストレスの溜まる展開がコレである。シリーズ初戦から3戦目、終盤の7回まで、ついに「タイムリー」は生まれなかった。
ラッキーもあったが、中田にようやく逆転となるタイムリーが出て、安堵したのもつかの間、すぐさま同点に追いつかれた。それで、またキリキリ。
‥でも、あそこでのキリキリは、心地よかった。
ペナントレース終盤、ファイターズはずっとギリギリの戦いを続けてきている。最後の最後まで諦めない。薄氷でも何でもいい。ただ、最後に勝つのは俺たちなんだ。
試合後に栗山監督が話していた、自分たちの野球‥‥。そう、これもまたファイターズの野球だったのだ。そんな当たり前のことを、久々の日本シリーズで、私も見失っていた。
ファイターズが「らしさ」を取り戻し、私も「いつもの」ファイターズを思い出したから、終盤に追いつかれても敗ける気はしない。ただ選手のワンプレーだけに集中している、心地のよい時間‥。
「いつもの」プレーを要所で見せてくれたのは、中島卓也だった。一時は逆転となった8回の攻撃。その起点となったのは、先頭打者・中島卓の四球。カウント0-2と、簡単に追い込まれながらも、持ち前の粘りを発揮。にわかに外国人投手をいらつかせ、精神のバランス乱す。彼の粘りは、もはや「武器」といってもいい。あれで反撃ムードが一気に高まった。
最後に試合を決めた大谷翔平。「いつもの」3番・指名打者に大谷が入った打線は、まるで迫力がちがう。それまで、そこに彼がいなかった打線と対峙していたカープ投手陣は、さぞ気持ち的に楽だったろう。さっそく3安打1打点の活躍だ。初戦、敗戦投手の悔しさをバットで取り返す。シーズン中、特に序盤戦において何度も見てきた光景であるが、日本シリーズでもそれをやってのけるとは、いやはや大した男である。
打者・大谷が地元で行われるあと2戦で勝利に貢献してもらい、マツダで、投手として1勝‥。大谷ひとりで、次から次へと夢が広がっていく。漫画でも、彼のような男はなかなか描けないのではないだろうか。
『日本シリーズは、やっぱり面白いですね』
ファイターズの応援しつつも、フラットな目線の自分も居合わせ、放送席にいた解説者の、この言葉に胸をなでおろした。とにかく、魅せる野球を‥最後までして、全国の野球ファンたちをも愉しませてほしい。3戦目にして、ようやく「らしく」なってきたファイターズであるなら、きっとそれができるはずだ。期待している。
日本シリーズ第3戦 試合前にダルビッシュ有から日本ハムへメッセージ