センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

野島伸司のモヤモヤ

村上春樹を差し置き(?)ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディラン。国内でも大きなトピックとなった。

 

授与決定直後からの、長い謎の“沈黙”もメディアで注目を集めていたが、曰く『あまりのことに言うべき言葉が見つからなかった』らしい。まぁ、それも無理ないだろう。作家ではない、しかも歌の歌詞が対象となった今回の選考‥。正直、我々だってこの彼の栄誉に驚いていたのだから。

 

 

必然的にボブ・ディランの生んだ、数々の名曲たちが、ふたたび現代人によって見直される機会も増えたけれど、私も、ある「再会」をはたした。

彼の代表曲でもある【風に吹かれて】の歌詞の一部が、1992年に放映された野島伸司ドラマ愛という名のもとにの中で、使用されていたのを思い出す。

 

‥もちろん、当時はボブ・ディランがどうのの知識は持ち合わせておらず、ただ『白い鳩はどれくらいの海を越えれば 砂浜で羽を休めることができるのだろう』といった印象的なフレーズと、また、これらを男女7名の俳優たちが交互に“素で”口にする、臭すぎる演出が忘れられなかった。

 

 

「愛という名のもとに」オリジナル・サウンドトラック

 日向敏文作曲の「Friends」は結婚式でも人気が高い

 

 

物語の最後も、7人が声を揃え『友よ 答えは風に吹かれている』の大合唱で幕を閉じるわけだが、あの主人公・貴子(役:鈴木保奈美の夢とも妄想とも受け取れる‥最終回だけは、どうも解せなかった。

いや、死んだはずのチョロ(役:中野英雄がいた時点で、現実の出来事でないのは、確かである。トレンディドラマお決まりのパターンといっていい、浜田省吾の【悲しみは雪のように】をバックにかぶせることによって、我々視聴者の疑問はかき消されてしまったが、依然、謎は謎のままだ。

 

野島伸司のドラマには、こういった作品がけっこう多く見受けられる。いわゆる視聴者任せ、視聴者泣かせ的な。「あとは想像をして愉しんでください」というのは、たしかに一つの手法ではあるのだが、彼の場合、その独特な作風も相まって、我々の「モヤモヤ感」は増幅される。

 

列車内で、男女があたかも心中したようなシーンがみられる「高校教師」はまだいい方で、たとえば「ひとつ屋根の下2」などが、その最たるものであった。

ウェディングドレス姿の小雪をエンディングに‥。長年、想いを寄せていた雅也は彼女と結ばれてメデタシとなるはずが、つい数コマ前に、たしか小雪は病気で逝ったはずである。‥アレは素直に喜んでいいのだろうかと、妙な余韻を残してくれる。

 

物語が何にでも成立してしまう「夢オチ」は、視聴者にはときに、卑怯で残酷だ。野島伸司よ、いったい答えはどこに吹かれているーー