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ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

【再生】 野村貴仁

29日放送、TBS系「ニュースキャスター 超豪華!芸能 ニュースランキング2016決定版」にVTR出演した、清原和博

 

 

1時間近くにも及ぶインタビューを見届けた。いろいろ引っかかった点はあったが、いちばんは、いつから薬物に手を染めたのかということだ。彼の話によると、当時合法だった薬物を除けば「引退後」であるらしい。

 

‥あわよくば、今後も野球界に携わっていたいのだろう。同様の罪で逮捕された江夏豊も現役を退いてから。やはり、現役時代から覚せい剤の類を使用していたとなれば、彼を見る野球ファンの目はさらに厳しくなる。『俺が見たあのホームランも、きっとクスリが打たせてくれたんじゃないか』そんなふうに。

 

だが、本当なのだろうか。薬物使用中は優先順位がクスリが一番になってしまうと口にしていた清原だ。わざわざテレビにまで出演して身の潔白を訴え続け、あげく全国の野球ファンを失望させる結果となり、一度、週刊誌にスクープされながら、なおもクスリを絶てなかった‥。“嘘つき”のレッテルを貼られた清原の言葉を、いちいち鵜呑みにするわけにはもういかない。

 

 

インタビュー中にも名前が挙がった野村貴仁は、著書でこう触れていた。

 

マリファナ仕入れてもらえへんか』

 

そう巨人在籍時代に同僚だった野村に頼んだとしている。‥むろん、野村の言い分も定かではないけれど、あたかも今も薬物依存があるかのごとく冷たく切り捨て、今後は関りを持たないと言っていた、まるで“戦う気のない”清原に、またしても私は失望した。平沼に喧嘩を吹っかけておきながら、自分よりも強くて屈強なマイク・ディアズの前では「やられ放題」だったあの頃と、何も変わっていない。

 

 

たしかに、今年になって画面に映しされた野村の姿、言動はかなり異様なもので、クスリの影響を疑う者もいた。‥それは実際にそうなのかもしれないが、野村貴仁がどんな人物であるかというのを知っている、筆者を含めた現代人には、ほとんどいないだろう。ひょっとしたら、彼は“もともと”なのかもしれない‥‥。

 

だから、野村自身の言葉で綴られた著書を手に取ってみた。9月に上梓した、その名も【再生】ーー

 

 

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来季契約の際に“ゴネる”イメージこそ、オリックス時代から持っていたが、これほどまでとは思わなかった。入団前から金のことで揉め、入団拒否をちらつかせて契約金を釣り上げた。社会人出とはいえ、プロ野球に関わる人間を前にして、強硬な姿勢をみせる新人は、なかなかお目にかかれないだろう。まして、彼はドラフト3位に「ランク」された投手である。

社会人時代の好投が認められて、一時はドライチ候補にも挙がっていたが、身体の小ささを理由に各球団指名は回避。公表では身長170センチとされていたけれど、実際はそれにも満たないらしい。本書でも、その身体の小ささのことを、しきりに触れている。相当コンプレックス抱いていたようだが、彼は「反骨心」を胸に、プロ一年目から活躍を見せた。

 

1998年、巨人へのトレードの経緯は、凡そ私の想像通りだった。前々年に、年俸調停をしてまで球団と金の件で争う。以外にも、当時の仰木監督の投手起用の仕方にも不満を募らせていた野村は、球団から嫌われていたと、しっかり自覚もしていた。行き先は巨人と広島以外が希望。ファンが聴いたら怒りそうな理由が、いかにも彼らしい。

 

 

‥このように、彼の文章は筆者が知る限り、20年以上前の出来事もほぼ明瞭に記憶している。執筆にあたり、過去の記録を引っ張り出せばいいだけの話だが、到底真実とは思えなそうなことを誇らしげに語っているあたりが、逆に、妙なリアルさがある。

 

 「技術論」も存分に語られ、今も衰えぬ野球への情熱とともに、“元プロ野球選手”であった事実を、否が応にも認識させられる。流行りの「校閲」によって手直しさせられたのか、野村なりの配慮かどうかは判らないけれども、場面によっては実名を伏せている。たが、あの「野村節」は健在。ただの悪口とも受けとれる箇所も、随所に散見できる。

 

 

件の清原との交流については、すでに報道されている通りで、特段真新しいものはなかった。これよりも、わずかな期間であったメジャーリーグでの経験やイチローとの交流。また、警察から逃亡したときの逸話の方が、個人的には愉しかった。

自分にしたら“こだわり”の部分も、それを貫きとおせば他人からしたら面倒くさくて、ただの厄介者。そして、おそらく‥クスリを使う前から風変わりな人物ではあったのは確かだろう。彼の半生と波瀾に満ちた球歴が雄弁に物語っている。

滑舌が悪いのも生まれつきのようだ。だからよけいに‥‥あの「髭ヅラ」だけは本当に何とかならなかったのだろうか。

 

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