センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

冒険者たちの真理

この世の中には「冒険者」と呼ばれる人がいる。

 

 

ウィキペディアによると‥【なにかの目的で、それが名誉、利益のために、あるいはなんらそれがもたらすものがなくても冒険それ自体のために危険な企て、冒険、試みに敢えて挑戦を試みる人たちのこと。あるいはかかる事件、事態に目撃者として遭遇した人たちも含めて言うことがある】とのこと。

 

なぜ人は冒険をしたがるのか、僕には理解できなかった。なぜなら、僕はできるだけ冒険したくない人間だから。冒険といえば「ドラゴンクエスト」だが、あれにも世界に平和をもたらすためという、旅の“目的”がきちんと存在する。目的がなければ、好きこのんで危険が潜む洞窟に立ち入ったり、モンスターと格闘したりなんかしないだろう。‥まぁ、これはゲームの話。

 

 

ドラゴンクエスト序曲 (オリジナルアーティスト : すぎやまこういち)

 

 

今の家に、もうかれこれ10年近く住んでおり、単身者向けにつくられたタイプの集合住宅としては、異例の「超古株」である。転勤や結婚したとか、なにかキッカケあって、大抵の方は引っ越すことになるだろう。しかし、明確な理由もなく引っ越す人間が、稀にいる。僕にその心情はよく解らないが、おそらく「心機一転」といったところなのではないか。新しい環境に馴染むまで、相当な時間を要する自分にとって、彼らは尊敬に値する。

 

理由もないのに、慣れ親しんだ地を“あえて”飛び立つ勇気。そこには当然、多少のリスクも伴うはずだ。仮に引っ越すとなれば、自分の中では、もうそれこそ“冒険”に等しく‥‥。

 

引っ越しで冒険とは、我ながら、なんともスケールの小さい話だ。僕をこんな感情に至らせたのは、最近、なぜだか矢鱈に「風船おじさん」が気になっている。幼かったころにワイドショーを騒がせていた、おぼろげな彼の記憶‥。

数個の風船で空へ飛び立つなど、リスクの大小どころか、生死の問題にすら関わってくる。それなのに当時の映像を見返すと『風船を信じています』などと、呑気に宣っている。大した装備品も身につけていないおじさんが、雲よりも高い5600メートル上空までいき、急速に高度を下げたあとは、風船の力と自らの腕を頼りに、地上に生還ーー

 

なんて冒険者なんだ!

 

僕は感動すら覚えた。とても人間がなせる業とは思えない。経費だけがかかり、しいていえば「名声」を手にすることができるのだろうが、当人が死んでしまっては元も子もない。では、彼を空の旅へ駆り立てさせたのは、一体なんだったのか。“理由”は、至極シンプルなものであった。

 

幼い頃、母親に買ってもらった風船を手にした時、これをたくさん持ったら空を飛べるだろうと思った。

飛んでみたい。純粋にそう思い、その夢は五十年たっても消えるどころかつのっていった。

 

 

「夢」である。

旅には目的はある。そして、冒険にはあるのが「夢」であったという、その真理を、僕から彼から教わった気がした。なるほど目的などは、冒険者に端から必要のないことだった。

いつまでも狭い檻の中に居続ける自分は、到底、夢のカケラもない。

 

 

《参考文献》

風船おじさんの調律

 

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