センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

僕のバイブル? 【働く男】 星野源

今年に入り、「映画」が筆者を悩ませていた。

 

 

‥と、いっても何が観たいとか何を観ればいいのか?といった類の話ではない。僕から云わせれば、これは幸福な悩みだ。すべての“元凶”は、大の映画マニア(♂)と知り合ってしまったことにある。

 

実際そんなに映画も観に行かないし、ぶっちゃけ、映画館という空間すら好きでもないのに、その日は調子に乗ってしまい、アレコレ彼と映画談儀に花を咲かせてしまったのが、事の始まりだった。

君の名は。】なら、多少僕でも解った。小説を読んでいたからだ。もちろん、映画の方は観ていない‥。【君の名は。】論を語っているうち、彼もまた、僕を“大の映画好き”と踏んだのだろう。次第に、様々な映画に関する話題を振ってくるようになった。

 

映画の話をする彼は本当に愉しそうである。話を聴いているこちらまで、幸せな気分になった。できることならば、彼との友情はこのまま維持していきたい‥。

自分も、まぁいわゆるメジャーどころなら知っているから、その辺の話をしながらお茶を濁していたのだが、これが逆効果に。「マニア度」はますますエスカレートしてきた。

僕も引くに引けない状況に陥ってしまい、当時流行っていたのだろう、僕のゼンゼン知らない映画にも、適当に相槌は打っていたのだけれど、さすがに限界がある。

 

『ごめんなさい、実は僕‥映画は、まったく観ないんです』

と言えれば、どんなに楽だろう‥。今更ながらにそんな告白をして、彼を傷つけたくなかったし、自分自身、妙なプライドが邪魔をしていたのかもしれない。

‥後ろめたさと申し訳ない気持ちから、だんだん彼と会うのが苦痛になってきた。むろん、映画をこよなく愛する純粋な彼は、そうした僕の煩悶など、知る由もない。僕は自分の性格を憎んだ。

 

 

星野源【働く男】 は、まさに目から鱗であった。

 

‥そうはいないと思うが、もし自分と似た境遇に置かれてしまった人には強力なバイブルとなり得る。なぜなら、本の6、7割くらいのページを割いて「映画評」が記載されているのだ。もともとは、雑誌連載にあったこの映画評のみで、「書く男」として一冊の本をつくろうと思ったのが、それではページ数が足りず「歌う男」と「演じる男」を付け加えたとのこと。ここでも彼の多面性が活かされた格好だ。

 

 

 

働く男 (文春文庫)

 

 

したがって本書の“メイン”は映画評である。‥ただ、映画評だけなら、もっと上手な書き手はいると思う。星野源の場合、まず自らの体験・思想をめいっぱい述べたあとで、最後の方でようやく内容に触れる程度‥。本当に“触り”だけなのだが、映画を“広く浅く”知りたい自分のような人間には、その程度の情報で十分。

本の中にあった【ザ・ロード】と【英国王のスピーチ】は今度、映画好きの彼に話してみようかと思う(まったく存じておりませんでした)。ひょっとしたら、一目置いてもらえるかもしれない。

 

面白かったのは、実、星野源も映画を映画館では観ていなかったということだ。その点、彼も読者を欺いている(笑)。腹痛が怖いとかで、すべてDVD鑑賞で済ませていたらしい。「大ヒット作」がないラインナップを不思議に思っていたら、どうりで‥。

 

 

彼の思想込みの映画評だけでも僕的には十分だったが、他に挙げるとすれば、巻末の又吉直樹との対談を収めたものと、発表当時まったく話題にならなかった(本人談)【急須】というショートストーリーを拝めるのがポイントか。浦和伊勢丹で大騒動が勃発?ある夫婦を描いた話。10年以上も前の、若干たどたどしい彼の筆致は、ファン必読?

 

 

働く男 (文春文庫)

 

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