センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

カラスに憑りつかれた男 【カラスの教科書】 松原始

キュッとしまった脚、すまし顔でヒョコヒョコと歩くアイツを、かわいいなぁとガチに思う。都会の街並みに、僕よりも溶け込んでいる、アイツを....

 

 

女の子の話ではない。これはカラスの話である。

‥僕がアイツに強い関心を持つようになったキッカケは、いくつかあって、まずはそこから話そう。あの光景をみたときは、誠に衝撃的であった。

 

ある日の朝方、国道に黒い何かが大量にうごめいていたのは、遠目にも分かった。おそるおそる近づいてみると、10羽以上にも及ぶ大量のカラスたちが『ガーガー』と激しく喚いている‥。

中心部には、おそらく夜間のうちに高速の車に轢かれたのであろう野良犬が横たわっており、「黒い集団」はそれに群がっていたのだ。数十メートルの先の車の気配を察すると、ヤツらは一斉に飛び立ち、近くの植木へ避難。車が走り去ると、ふたたびやってきて、時間との勝負といわんばかりに、勢いよく“生肉”をついばんでいた。

 

‥しばらく見届けていたのだが、そのサイクルを何度も、何度も繰り返す、ヤツらたち。“食事”に夢中になっていながらも、自らが車に轢かれないように、周囲にも最大限の注意をはらう。

あの「察知能力」には恐れ入った。また、死骸を貪り食うカラスたちを見ているうち、僕はまるでアフリカにでもいるような錯覚さえした。日本で「野生」の強さを、思い知らされたのだ。我々のいちばん身近に存在する、地球界のスカベンジャー。

 

だが、ヤツらは何も死肉を食すだけでなく、自ら捕食も行う。一度、“生きた”獲物を狙っていたのを目撃したことがある。しかも公衆の面前で、だ。

その「惨劇」が起こったのは、何万ものヒトが見守る野球場。上空でドバトを襲い、重傷を負わせた。突然、フィールドに落ちてきたドバトに騒然とする観客‥。見上げれば一羽のカラスが悠々と舞っている。群れなければ何もできないわけでもないらしい。その“アウトロー”な強さにも、弱い僕は惹かれた。

 

 


【Pick Up】珍事発生!! カラスが鳩を襲撃し試合中断 2013.05.05 L-F

 

 

動物園でも、ヤツらの姿はよく見かける。飼育動物の餌を横取りしようとするのが、大半の目的だ。一時期流行った『お前に食わせる飯はねぇ!』‥飼育員さんたちを度々困らせている。こと動物園においては、完全に“害鳥”扱い。しかし、こればかりはヤツらの方に問題があって、餌の横取りならまだかわいいもので、単に“嫌がらせ”をしにくるだけの個体も多くいる。

動物の毛を毟りとったり、体をつついたり‥。基本、優しい飼育動物は反撃もしてこないから、カラスはやりたい放題だ。Youtubeなどで探せば、そういった動画は今、溢れかえっている。‥本当は映しくたくもないのに、ヤツらがそこかしこに居るのだから、もうどうしようもない。

 

 

僕は松原始さんが書いた【カラスの教科書】という本を読んで、これらの謎や疑問がだいぶ氷解した。

 

 

カラスの教科書 (講談社文庫)

 

 

動物園で嫌がらせをしにくるのは、奴らがちょうど暇を持て余している“時間帯”であるということ。毛を毟り取るのは、毛づくろい‥だったなら、少しは見直したけれど、そうではなく、単にてめぇの「巣作り」に用いていただけ。笑

 

カラスは人間同様に日中に行動し、夕方頃になればネグラへと帰っていく。朝に出される、主食の“ゴミ”をたくさん食っておけば、あとは時間つぶし。プラプラ遊んでいるだけ。まさに「悠々自適」である。漁られたゴミ置き場が無残な光景となっているのは、食えないゴミはヤツらが投げ捨てる(吐き捨てる)から‥‥とか、あらためて言われてみると『なるほどなあ』なんて肯いてみたり。

 

 

著者は本書をカラスの「強化書」といい狂歌書」とも、さらにいった。トリセツは、「烏説」と書く。トリビア以外に文章のセンスも、なかなかユニークで味わい深い。カラス愛に満ちた400ページ近くもある雷鳥社版)、辞書のようにブ厚い本‥。これを読み切るのに、一カ月も要してしまった。

しかし、おかげでカラスといえば「ハシブト」と「ハシボソ」の2種類がいることくらいしかの知識を持ち合わせていなかった僕も、みるみるうちに博識に‥ 笑

 

ちなみに冒頭、『歩く姿がかわいい』と書いたが、カラスは滅多に歩かないらしい。あれ、おかしいな(そりゃ飛べるんだからな)。旺盛な食欲は、意外にも人間より高い「体温を保つため」でもあるのだとか。ヤツらもヤツらで、都会の中を必死に生きているようだ。

 

 

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