折しもパラリンピック真っ最中......
昨今、身体に障害を抱えた方たちの活躍が目覚しい。寝たきり社長に寝たきり芸人‥といった人も、僕は知っている。バイタリティー、気力さえあれば、人間に不可能なことはないのだと、彼らは教えてくれているようだ。
先の【R1グランプリ】で優勝した濱田祐太郎は、“ほぼ”全盲らしい。一度「バリバラ」を観ていたときに、カンニング竹山が放った一言を思い出した。
『お前ら、どんだけ自分武器にしてんだよ』
たしか脳性麻痺の芸人‥‥。手の震えなどを“ネタ”にした芸のスタイル。その発言の前に『同じ芸人として言わせてもらうけど』そう付け加えていた竹山は、粋だった。自分を武器にする‥すなわち「障害」を武器にした芸風は、濱田も一緒。
『見えへんけど、眩暈がする』 『見えへんけど、二度見した』
近年台頭してきた新しい芸風。障害ではないけれども、自らの薄毛や体型をネタにする芸人も、最近やたら目立つ。しかし、本当の意味でハンディを背負った芸人の障害を、はたして笑っていいものなのだろうかと、人は一度、立ち止まって考えてみる。こと放送業界においては、長い間“タブー”とされていた部分.....
Amazon.jpより
いや、おかしかったら、どんどん笑ってあげていいと思う。芸人という道を選んだ以上、彼らだってそれを望んでいるはず。そうした我々とは少し異なった生き方もあるのだ、と。某24時間テレビのように、オレは、私はこれだけ頑張って生きているの“お涙頂戴”だけが、すべてではない。むしろ、それを受け入れて、障害を笑いに変えられることもできる彼らの潔くて強い、すてきな生き方に、僕は尊敬の念すら抱いてしまう。
だから、そんな君に遠慮なく僕もボケさせてもらう。濱田、あのときのお前‥‥
むっちゃ、男前やったで
って、自分の顔は見えへんか。
◇3.11と天丼
東日本大震災から7年。筆者の居住区に大きな被害はなかったけれども、やはり影響は大きかった。どこもかしも節電‥。薄暗い街を歩いていて、ようやく灯のともった店舗を発見。そこは天丼をメインとする某チェーン店だった。
僕はひどくお腹を空かせていた。主婦、かどうかは分からないが、スーパーやコンビニにある即席な食材は買い占められていて、軒並み品切れ状態‥。普段から料理といったものをあまりせず、食糧の備蓄もしていなかった僕は、途方にくれていた。
そんなとき、ようやく見つけられた天丼をメインとする某チェーン店。震災直後であったにも拘わらず、多少メニューに変動はあったものの、営業は続けていた。
普段はなんとも思わない天丼を口にいれた瞬間‥‥『美味しい』。天丼がこれほど旨い食べ物だったとは‥‥。「生」を実感した。あの暗い街のなか、一杯の天丼が僕を救ってくれたのである。
あれから7年‥‥料理嫌いは治らないし、相変わらず備蓄もできていない。けれども、そこにヒトがいる限り、そこに天丼を売っている店が限り‥たぶん僕は生き続けられるだろう。人間、そんなヤワじゃない。