気づけば、もう10月も半ば......
つい半月前まではあんなに暑かったのに、最近は朝晩の冷え込みが体に堪えるようになってきた。僕の大好きな秋をすっ飛ばして、このまま冬に突入してしまいそうな感じ。だからなのか、今の時期までプロ野球を観れる喜び、そこにファイターズがいる喜びを、いっそう噛みしめていた次第である。
ファイターズは敗けたら終わりのクライマックスシリーズ1ST第2戦。幾分一方的となった初戦と打って変わり、この日は緊迫の投手戦。1点リードのまま迎えた7回、そこまで踏ん張ってきたマルティネスが、ついにつかまった。同点‥‥
ホークスの後続投手を考えても、点は取れない。もう1点差を逃げ切ることしか頭になかった。その考えはおそらく首脳陣も一緒だったと思う。あのときは一瞬覚悟した。地元の大声援に押され、歓喜に沸くホークスナインの姿が脳裏をよぎる。それはそのままファイターズの2018シーズン、終焉を意味する‥。
ところが直後の8回、ツーアウトランナーなしからの勝ち越し劇である。大田泰示がまだ“終わらせなかった”。左中間を抜く決勝のタイムリーツーベース。その打席までノーヒットだった大田が、この大一番‥ここぞの場面で。本当に勝負強い男だ。ヒーローにまでなれたのは、今月初めに札幌ドームを訪れていた明石家さんまさんからパワーを頂いたおかげか。
そのヒーローインタビュー。やたら、彼の登場が遅かった。どうやら背番号「37」、矢野謙次のユニフォームに着替えていたのが理由らしい。そんなことで‥といったら失礼だが、ごく個人的な都合でウン万人の観客を待たせてしまう大田がいじらしい。
巨人時代、矢野先輩が代打満塁本塁打を放った際、当時の渡邉恒雄会長をして『1000万の価値がある』そう言わしめた。「1000万」とまではいかないまでも、大田の一撃もその半値くらいの価値はある。「500万」で、少なくとももう一日‥我々ファイターズファンはまだ夢をみさせてもらえるのだ。ありがたい。
「 立ち向かう勇気」を体現した宮西.....
勝ち越したあとは宮西尚生・石川直也の必勝リレー。8回、まず左打者が並ぶところで宮西の投入。流れがよかった。ただ、昨今は左腕を苦にしない左打者も多く、事実、今シーズンは左打者に痛打をもらうケースもけっこう見られた。そこが若干気になったけれど、中村、柳田といった巧打者に自分のバッティングをさせないあたり、さすがである。
そして、石川直。あのMAX155キロの直球を見ていたら泣きそうになった。まるで2年前の大谷翔平‥。振り返ればボコボコにされた開幕戦から約半年間‥‥ファンは石川直の成長を、じっと見守り続けてきたシーズンでもあった。うまくいかなかった日も多々あったからこそ、大舞台で三者から2三振を奪う圧巻の投球を披露した、たくましい彼の姿に、おもわず感極まった。石川直もすごいけれど、信じ続けた栗山英樹監督も同等にすごい。えらい。
‥‥変な話、ファーストステージ最終戦に敗れたとしても、もう後悔はしないだろう。ファイターズらしい、今シーズンの「集大成」であるかのような、本当に素晴らしい試合を拝ませてもらった。
一瞬でも負けを覚悟しただけに、“一度は死んだ身”。勝敗にとらわれず、あとは心ゆくまでファイターズ野球を、「やきう」がある日を、愉しませてもらいたい。