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【母親NG!ヤバすぎる「グッドナイト・マミー」】エースの映画日誌ミニ 《2019年2月24日版》

下記は以前、猿の生態について述べていた霊長類学者・伊沢紘生氏の言葉である。

 

ある日、あ、これはもしかして逆なんじゃないかとふと思いついたんです。見えないんじゃなくて、ボスなんてものはそもそもいないんじゃないかと。そう思ってみると、ボスの存在なんて幻のごとくかき消えて、あるがままの群れの姿がスッキリ見えてきた(※1)

 

「ボス猿」の存在を信じて‥‥というか、半ばそのように教わってきた私たちの認識を根底から覆してくれるものであったが、あいにく、今回のエントリに猿はまったく関係ない。注目すべき点は猿ではなく『そもそもいない』『幻のごとくかき消えて』の箇所である。

偉そうにしている一匹の猿を“ボス”のごとく捉えてしまった人間が大勢いた。しかし、学者の目にはそう映らなかった。‥とはいえ、ボスが存在している可能性も完全には否定できず、結局のところ、猿社会に身を置かないかぎり、真実は誰にも解からない。

ここで言いたいのは、つまりはこういうこと。人間には「見える者」と「見えない者」が存在し、その人間の目ほど不確かなものはないのだ――

 

 

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オーストリアで製作された【グッドナイト・マミー】の位置づけは、一応ホラーだそうだ。‥たしかに、パッケージはいかにもソレっぽい。だが、始まってしばらくは怖さを感じさせない。どころか、むしろ退屈なのだ。キャストのセリフも少なく淡々としていて、ホームビデオか何かでつくられたような、お手軽な具合。

 

正直、ハズレだと思った。ぐるぐる巻きの包帯でミイラ然とさせたり、見るからに気持ち悪い虫をヒトの口の中に入れさせたり、もしやこの映画、怖さの意味をはき違えているのでないかと。少し金のかかった、学芸会レベルの創作に付き合わされるのはご免だ‥‥

 

 

いやいや【グッドナイト・マミー】が謳っていた恐怖とは、想像を絶するものだった。『シャレにならない』とは、まさにこのことだろう。ショッキングなラストへと向かっていく過程は、ホラーとはまた種類が異なる。‥言うならば、常軌を逸した人間の異常行動の観察、記録なのである。

 

登場してくるのは、ほぼ全編を通じて親子3人。マミーは“見た目通り”、ミイラの怪物なのか。「見える者」は追いつめられ、「見えない者」は逆に見えないことで、追いつめられてしまう。

日本では『見ぬは極楽』という諺がある。はたして、見えることは不幸なのか、見えないことの方が本当に幸せなのか‥‥。その答えは、まだ私にも解からない。

 

《関連》

(※1)動物園巡礼 第4番の3「出サル山記」 より

 

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