美馬学に鈴木大地、そして福田秀平‥‥ずいぶんおとなしめな、今季のFA宣言者たちである。
いずれも所属していた各チームで欠かせない戦力であったのは間違いない。けれども、彼ら欲しさにあれほど多くの球団が群がるとは。‥そういえば、一時期FAでの移籍が取り沙汰されていた、これまた“いぶし銀”のファイターズ・中島卓也に対しても、複数の球団が獲得に興味を示し「争奪戦」の様相を呈していた――
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今シーズン、ずっと観てきた“当事者”側とすれば意外。理由は後述。ただ、先の【世界野球プレミア12】で周東佑京が「脚のスペシャリスト」として重宝されていたのを、あらためて見届けると、中島に一定の需要があったのも頷ける。前回大会(2015年)で選出されたのも、今思えば「周東的」な役割を求められていたからではなかったか。
120試合に出場して、失策はわずか3。遊撃手としての守備率.993はリーグトップだった。この数字だけ見ると“守備職人”健在といったところだが、不思議と、印象は薄い。中島の守備と聴いてすぐに思い返されるのは、7月28日の埼玉西武戦で秋山のゴロを後ろにそらした「サヨナラエラー」。‥やはり、あのインパクトがあまりにも強烈すぎた。
それもそのはずで、以降のファイターズの戦績は15勝33敗1分け。10もあった貯金を2週間で使い果たした。中島にとって「1/3」、敗戦に直結する、たったひとつのエラーが文字通り、命取りのような形になってしまった格好である。
また、今季は打撃の面でも苦労し、打率.220、本塁打0、打点16。これでレギュラーを張るのは正直心もとないけれども、とりあえず、この部分の数字はいいだろう。あくまで「周東的」なものを彼に求めるならば盗塁数「12」に対しての失敗が「5」は、西川遥輝と並んでチームワースト。企画数を考えても、高い成功率とは言えない(西川は成功の数は「19」)。さらに得意だったはずのバントミスも目立ち、打席での粘り強さも失せた印象‥。
つまり「当事者」側から観た今シーズンの中島は、持ち味が十分に発揮されず、まったくイイところがなかった。打力で勝る若手選手の突き上げもあって、移籍必至かと思われたが、どんなときもファンとはありがたいものである。不調に陥った中島の残留を、心から望んでいたというのだから。
一時の情に流されて、こういう甘ったれた文章を書く輩‥。かなり虫唾が走る(笑)のは、まぁ良いとして昨オフの中田翔と同じパターンになった。中島といい、来季はこうしたファンの熱い想いに応えなければならない。
好成績を残して来季以降、ファイターズ「残留」という、同じ決断をしてくれたなら、また違った形の歓迎を“万人から”受けるのではないか。