センテンス・オータム

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【負の「野島伸司」作品系譜】エースのドラマ日誌 《2020年1月22日版》

安藤優子が絶賛!していたとされる、川本裕司著【テレビが映し出した平成という時代】を、つい読みふけってしまった.......

 

 

amazonなどでの評価はいまひとつのようだが(笑)、私は好印象。ありがちなヘンに「研究者気取り」しているわけでもなく、きちんと史実に基づいていてムダがない。どこかに偏ることもなく、各局わりと均等に取り扱っている。

ただ、著者の得意分野であるのか「ドラマ」が手厚かったわりに、バラエティー番組、アニメ関係が、幾分弱かったか。‥あの知識なら「ドラマ史」だけでも十分、本が一冊書けただろう。あと【ニュースステーション】【世界の車窓から】【水曜どうでしょう】の歴史や裏話について書かれた項も、なかなかに興味深かった。平成という時代に生まれた方、青春を過ごされた諸兄姉は懐かしすぎて“一気読み”必至。

 

そういえば今年は「世にも奇妙」30周年メモリアル

テレビが映し出した平成という時代

 

川本氏に触発されたわけでもないが、今記事では「ドラマ」について少々‥。といっても、私は本書のようにはいかないのだけれど、唯一、人並み以上に語れるものがあるとすれば、それは野島伸司氏が脚本を手掛けた作品だ。数ある中で『ひとつ好きな作品を挙げよ』と、ヒトに問われたら、迷わずこう応えるだろう。

 

この世の果て

 

1994年の1~3月クールに、フジテレビで放送。全話の視聴率が20%以上を超える人気がありながら、同じ野島ドラマの【101回目のプロポーズ】や【ひとつ屋根の下】と比べると、圧倒的に知名度が低い。よって川本氏の本でも触れられていない。それは、なぜか。

 

‥答えはひとつ。この作品が、どこまでも 暗いから。まったく救いようのない暗さは、まさしく“精神を病む”レベルである。その証拠に、いまだDVD化はされておらず(VHSのみ)、もっといえば当時のフジには【NG大賞】という、演者・出演者のミステイクを晒すようなバラエティー番組があったのだけれど、相当張りつめた空気の中で撮影が行われていたのだろう‥。当作品のカットは、ついぞ出てこなかった。

 

回を追う毎に、観るのも辛くなっていく展開。しかし、その先に「極限の愛」が待ち受けているという、ストーリーだ。路上だろうが病院の中だろうが、ところ構わずタバコを吸う、若き日の鈴木保奈美。廃人スレスレ、薬物中毒者となった(懲役30日然の)三上博史。体を張った、横山めぐみのエロティックなシーンには、当時、私も家族で観ていて目のやり場に困った憶えがある(笑)。たしかに現代で放送するのは難しい‥。

 

【この世の果て】については、語りたいことが山ほどある。が、あまりマニアックになりすぎてもよくない(苦笑)。ご覧になれるのなら、一度どこかで観てほしいが、それなら心身の状態が良いときに。‥でなければ、あなた自身が“この世の果て”に連れていかれてしまう危険性、大だ。味わったことのない「愛」は、私が保証する。

 

ノベライズ本。かなりドラマに忠実でお勧め

この世の果て

 (C)amazon

 

1997年にフジで放送された「月9ドラマ」はすべて高視聴率をたたき出し、黄金時代とする向きが多い。‥これに当てはめれば、94年は野島時代。前述、【この世の果て】に始まり、4月から【家なき子(企画のみ 日テレ)、7月クールからは【人間・失格 ~たとえばぼくが死んだら】(TBS)。異なるそれぞれの局で視聴率稼ぎに貢献した。

 

ただ、傾向として見て取れるのは、どれも内容が暗い点。【家なき子】では、まだあどけない少女に『同情するなら金をくれ』と言わさせ、壮絶な校内いじめシーンが物議を醸した【人間・失格】は、こちらもコンプライアンスに厳しい現代なら、打ち切り確実だった。

 

どうもこの時代の野島氏は、病んでいたとしか思えない――

 

そう解釈してしまいがちなところ、後年判ったのは、氏が本当にやりたかったのは実、元々がこの手のタイプの作品であったということ。平成初期に描いた、コミカルなテイのラブストーリー(「愛しあってるかい!」etc)は“売れるため”だけに書いていたらしい。ある程度、自分の好きな分野、事柄が作品に反映できるようになって、徐々に際どい(暗い)作品を世に出すようになった。

 

2014年放送【明日、ママがいない】(脚本監修 日テレ)で、スポンサー降板騒動は記憶に新しい。書きたいものを書けなくなった、立案できなくなった野島氏は、かつての勢いを失くしたかに見える。創作の場を地上波以外にも求めるようになったのは‥‥もはや、必然なのだろう。

 

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