『違うんです!』
前回の記事で同年代の知人男性を怒らせてしまった。いや、むしろ私は広末涼子がダイスキなのである。もっと言わせてもらうなら、彼女の「人生設計」を惑わせたのは、別の男の存在があったという話を、これからしたい。
その前に、前回記せなかった広末・礼賛を......
可憐なルックスに加え、唄ってよし、芝居してよし。彼女が十代だったころは、筆者世代では、さながらアイドル時代の松田聖子と双璧。‥申し訳ないが、現代のAKBだかSKEだかに属している女の子たちとは、ちとレベルがちがった。
「歌手・広末」の持ち歌の中に【MajiでKoiする5秒前】という曲がある。コレが超絶いい。好きな男子がいる女の子は、彼がいる前で真っ先にこの曲をカラオケで唄うべきだ。すぐに落ちる。‥流行っていたころ、私に向けて唄ったわけでもないのに、Majiで歌い手にKoiした男がここにいる。
【風のプリズム】も名曲
演技力の高さは国内でもトップクラスに位置する。お世辞でもなんでもなく、私はガチでそう思っているのだが、特筆すべきは、彼女の「目」だ。ちょっとした感情の変化などを表現する際の、目の使い方‥動かし方が絶妙なのである。目だけで演技ができる女優は多くない。
したがって、自作のドラマの中で魅力的な彼女を起用したかった野島伸司氏の意図は、非常によく理解できる。‥そう、氏こそ「女優・広末」の運命を変えた張本人。一時期、野島作品の“常連”と化していた。しかし、今思い返してみても、ずいぶんと特異な役柄が目立つ。
ビーチボーイズの翌年放送の【聖者の行進】では、髪を赤く“染められ”、学校でも浮いた存在の非行少女役(話題の?清水章吾氏と親子)。主人公からは「赤鬼さん」と呼ばれていた。同級生に慕われていた「真琴」とは、180度異なる。
【リップスティック】では冒頭より傷害事件を犯して鑑別所に入れられ、踏み入れてはならない禁断の恋に発展。極めつけは【世紀末の詩】(第1話)。ここでは、なんと幽霊の役に‥‥。もはやヒトでもなかった(ちなみに竹野内豊とはここでも共演したが、彼も当作品で人気ダウンしたとの説あり)。
すべての役を完璧に演じきってしまうのは、まさに天賦の才ゆえだけれど、彼女のイメージを変えたのは、短いスパンで集中していたこれらの作品が、まったく無縁ではないとも思われる。‥むろん、筆者はそれをひっくるめて支持していたわけだが、皆が皆、そうではなかったわけだ。
ハタチを迎える少し前。年齢的にも、アイドルからの「脱皮」といえば聴こえはいい。しかし、社会‥人間さえも逸脱した役を、人気絶頂時にことごとく演じさせられた広末涼子は今、野島氏に何を思う――
《参考》