柴田保光氏死去――
この投手も思い入れがあった一人というか‥。西武にいたときの「ノーコン」は知らないが、ハムに移ってからはとにかく制球力に優れた投手だった。投法をスリークォーターに変えて花開いたのは、ちょうど同時期に活躍していた巨人・斎藤雅樹と一緒。この斎藤や桑田真澄の投球フォームは真似られても、当時、地味すぎる食肉軍団孤高のエース柴田のフォームを真似していた中学生は全国広しと言えど、おそらく自分くらいだったろう。
往時のファンの間で見解は一致している。‥一致していると思いたい。あのときの大黒柱は西崎でも武田でもなく、柴田であったのだと。安定感が随一。打線の援護が少なく勝ち星には恵まれなかったが、それを裏付けるかのごとく防御率10傑の常連。
ノーヒットノーランを思い出やハイライトに挙げる人も多いけれど、個人的にいちばん印象に残っているのは自身最初で最後となった1992年、開幕戦での勝利投手。王者・西武相手に堂々の1失点完投勝利は、パリーグの試合にしては珍しく全国中継されていた。あの勝利に勇気づけられたのは、子どもながらによく憶えている。故人に哀悼の意を表したい。
それにしても、柴田氏の65歳での逝去とは若い。‥今週から新シリーズが始まる【相棒21】杉下右京役の水谷豊は御年70歳。「新相棒」を務める寺脇康文は、あんなに若々しくて今年60歳である。制作期間が約半年にもわたる長丁場‥。年齢的な部分で不安は隠せなかったというが、力づよい後押しが水谷氏からもあったそうだ。
かつては各局の連続ドラマを視まくっていた筆者も、気づけばここ数年‥きちんと最後まで「完走」できているのは、この作品のみ。基本、一話完結型の作風が、夜もネット観賞やらで忙しい現代人にフィットしているのだろう。まぁ、それを言ったら【相棒】だけではないのだけれども、長年の習性からなんとなしに、時間になったらチャンネルを合わせてしまう(笑)
「新相棒」が寺脇になったと聴いて、正直『ゲッ!』となった。新鮮味に欠けたし、まったく別の人選で【相棒】に新しい風を吹かせてほしかったから。
ただ、夏ごろに週刊新潮で掲載されていた水谷豊の自伝を読んで納得。どうやら今回の寺脇が最後の「相棒」となる模様(ワシはそう解釈した)。トリを飾るのが初代相棒を務めた寺脇であるのなら確かに、物語的にも締めくくりには相応しい人材であると言える。
それからというもの、再放送や動画サービスで「寺脇時代」を必死に補完した。筆者が真剣に同作品を見始めたのは、実、ここ数年なのである。
で、あらためて寺脇演じる亀山薫の良さに気づいたのは特命を毛嫌いし、いつも嫌味ったらしく、反町や成宮寛貴では手に負えなかった伊丹刑事と張り合えるところ(笑)。新シリーズでも彼とのバトル?が見どころの一つであるらしい。
右から2人目の人相が悪い?男
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水谷豊は一度、自身が監督を務めた映画を撮っている際のラフな姿をした彼を見かけたのだが、このドラマが始まる時期になると髪を黒く染め直し、オールバックにしてまた「右京さん」に戻るところが好き(笑)。半年ぶりに「右京節」を拝めるのが楽しみだ。
考えてみれば寺脇とは【刑事貴族2】でもコンビを組んでいた。右京のときとは若干異なる、軽妙な本城刑事もアレはアレで良かったのだが、それから30余年‥。今秋、三度同僚警察官となった名コンビからますます目が離せなくなりそうだ《了》