先月放送の、三重テレビ【LEGEND】という番組に釘付けになった。
映し出されたのは、戦火に散った不世出の右腕・沢村栄治。彼の生い立ち、戦争に翻弄されながらもマウンドを死守した壮絶な野球人生を辿り、筆者は改めて襟を正した。
プロ野球界に燦然と輝く、沢村賞。それは単なる表彰ではなく、一人の男が命を削って示した「先発完投」という美学への、最高の敬意なのだ。
昨季、わがファイターズの伊藤大海がその栄誉を手にした。世間では同賞の基準「7項目中3項目」しか満たしていない「史上最少」の選出を揶揄する声もあった。だが、投球回数196回2/3、195奪三振という両リーグ最多の数字を直視せよ。
分業制な現代野球の波を、150キロ超の直球とスタミナで押し返した、そのタフネス。彼は数字以上に、沢村栄治が遺した「エースの掟」を体現してみせたのだ。その功績に、一片の曇りもない。
ところで、今年から新設されるという「長嶋茂雄賞」。これには首を傾けざるを得ない。沢村賞が残酷なまでに明確な数字を突きつけるのに対し、この新設の賞には、まだ確かなメルクマークが見当たらないのだ(2月23日時点)。
打者にとって最高級の栄誉‥。しかし、単なる打率や本塁打なら既存のタイトルで事足りる。もし、かつての長嶋氏が見せたような「華」や「スター性」という曖昧な物差しで選ぶのなら、それは選考委員の主観に左右される、極めて不透明な選考に成り下がりはしないか。基準が不透明な選出では、昨年、惜しまれつつ旅立たれたミスターも浮かばれないだろう。
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強いて今、この「長嶋賞」にふさわしい、走攻守三拍子揃った「華」を持つ者を挙げるとすれば‥‥。ワシの脳裏には、ある一人の若き主軸の姿が浮かぶ。
奇しくも今季からミスターと同じ背番号「3」を背負い「4番サード」の定位置を狙う男、郡司裕也だ。
右打席から放たれる巧みなバットコントロールはもちろん、ファンの心を一瞬で掴む卓越した「話術」と、周囲を照らす、天性の明るさ‥。その佇まいは、かつて日本中を熱狂させたミスターのそれと、どこか重なってみえてしまう。
彼がもし、記録を超えた「記憶」に残る一打を放ち、お立ち台で再び我々を魅了したとき、この不透明な新設賞は、初めて確かな意味を持つのかもしれない。
『4番、サード、長嶋』。この場内アナウンスに震えた世代を納得させるだけの輝きを、背番号3の新たな主人は見せてくれるだろうか。筆者は、その背中が「答え」になる日を待っている。
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