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センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

故人サイト ー古田雄介ー

なるべく人から恨まれないように、おとなしく過ごしていても、意味もなく知らない人間に刺されてしまう‥‥

 

 

相模原障害者施設殺傷事件。大量無差別殺人は大昔からあったとはいえ、今回の被害者の人数は戦後最大であるとか。

動物とて、縄張り争いであったり、食欲を満たすためであったり、そこに‥つまり、殺すことに何かしらの意味、理由があるのだ。およそ「思考」を持った人間のなせる業とは思えない。

 

いや、相模原のにかんしては、犯人なりに意味はあったのだろう。これまでに見られた“自暴自棄”的な殺戮では、どうもないようなのだ。人は、その意味を探ろうとする。

ところが“手がかり”となるはずの、過去に犯人が投稿したSNSを覗くと‥案外、普通なのである。

 

もちろん、常人には理解したがい投稿も中にはあるが、それでも秋葉原の犯人(彼は掲示板)であったり、今年の小金井市で起きた殺人未遂‥あのストーカー男などに見られた「殺害予告」とも受け取れる、異様な投稿の数々と比べると、今事件の男は、かなり普通だ。この辺も、過去の犯人たちとは一線を画している。

 

 こうした人の心の動き、変化の具合を、当人のSNSを通じて探ろうと試みたのが、古田雄介著の「故人サイト」だ。

 

 

故人サイト

 

 

本書はすでに亡くなった方のブログやツイッターをもとにして「検証」が行われている。相模原の男にかんしていえば、死んだわけではないけれど、もう二度と社会に出てくることがないであろうことを考えたら、彼が発信してきた簡易投稿サイトも「故人サイト」となり、管理者に削除されないかぎりは、半永久的にネット上で晒されることになる。

 

本の中には、理不尽な理由で殺害されてしまった被害者のブログあり、事故や病気、または自殺によって更新が止まったサイトなど、「終焉」の仕方は多種多様。

迫りくる死‥‥とりわけ“闘病系”は、その生々しい“告白”に、見ているこちらも目を伏せたくなるほどだ。あらかじめ死というものを意識している“自殺系”は、もう「負の要素」が充満している。

古いのでも、現在でも遺されているものは意外と多く、気になって私も“現場”を覗いてきたサイトは多数。ブログ内で死へのカウントダウンを始めた「無への道程」など、ブロガーの私でさえも、初めて知ったサイトは少なくなく、ゆえに衝撃も大きかった。

本書はもう書き手のいないSNSの、さながら「案内書」として利用するのがいい。

 

 

少し異質だったのは、二階堂奥歯さんという方が綴っていた「八本脚の蝶」だろうか。これは私も気になり、没後に書籍化されたものを早速手に取った。‥かなりの読書家であったらしく、紹介されていた本や映画をつぶさにメモった。こうしたカタチで‥わずかながらも、故人の“遺志”が引き継がれているといってもいいのだろうか。

 

インターネット全盛の今日。このような使い方があることを知れてよかったし、また繰り返される犯罪を抑制させるものとして今後利用されれば、著者も冥利に尽きるだろう。なかなか有意義な一冊だった。