センテンス・オータム

ディープ・マニアック・鋭く「DMS」 様々なアレについて... (シーズン中は野球ネタ多し)

木嶋礼賛? 【毒婦。】 北原みのり

婚活だなんだ、現在(いま)のような堅苦しさもなく、もっと気軽に趣味友や異性と知り合えた、当時の出会い系サイト‥。身の回りの人間が手を出していたのもあって、以前ボクもかじったことはある。

 

 

世代的に、彼女はボクの少し上だけれど、サイトの利用時期が重なっていたときは、あるいはあったのかもしれない。下手すると、自分も木嶋佳苗と“出会っていた”。

 

‥幸いにして出会わずに、ここまで生きてこられたので少し想像をしてみる。

会う約束を取りつけ、待ち合わせ場所に現れた“初対面”の彼女を見た瞬間、『ウワッ!』となりそうだ。もちろん、あまり良い意味でない方での『ウワッ!』。

人間、なにも見た目だけではないが、異性との出会いを前にして、多少なりとも胸ときめかせている殿方なら余計に、それが偽らざる正直なところではないか。その場で帰ってしまうヒトも、おそらくいる。

 

‥本には載っていなかったが、きっといたはずなのだ。彼女と出会った男、皆が皆‥財産を注ぎ込むほど、夢中になったなんてことは到底ありえない。しかし、傍観者である我々は、彼女に突っ走り、あげく殺されてしまった男性たちの方に強い関心を持った。いったい木嶋のどこに、そんな「魅力」があったのか、と。

 

 

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毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記 (講談社文庫)

 

 

 

ようやく理解する。彼女は「ネットの恩恵」に最大限預かっていたのだ。‥逆にいえば、ネットさえなければ、様々な男から愛されることもなく、また彼女自身も犯罪者にならずに済んだのかもしれない。

 だいぶ以前から、デートクラブなどで“男あさり”はしていたそうだが、インターネットの普及により、彼女はさらに加速した。小林麻央さん死去で、最近ふたたび注目を集めだしている個人ブログ‥。ブログに関する本を読むと「セルフブランディング」の重要性を説くものが、たいへん多い。

 

セルフブランディング:企業や組織に所属しない「個人」が自らをメディア化し、自らの力でプロモーションすること wikiより

 

彼女はこれに長けていた。かつてブログのヘビーユーザーだった彼女は、料理好きで家族想いの大そうな「イイ女感」を演出。毎回丁寧語で綴られる文章にも、まったく澱みがない。

彼女はそのブログを積極的にアピールしていたという。読んでいた男たちはさぞ木嶋に好感を持ったことだろう。いずれ出会ったときの、相手に与える容姿の“マイナス点”は、ブログによってだいぶ「緩和」されていたにちがいない。

 

一部報道では“非モテ”を狙っただとか、(金持ちの)高齢男性をターゲットにしたとあるが、そうでなくともネットの世界の中でつくられた彼女は完璧であり、だからこそ、何の躊躇いもなく男も彼女に金を差し出したのだろう。

 

また太った容姿を除けば、木嶋は異性に“モテる”ツボをたいへんに押さえている。料理の旨さは本物だったというし、エッチも抜群だったそうな。また、彼女が発する「声」も、男心をくすぐるような、たいへん甘美な声をしていたのだという。

 

このように一見すると「木嶋礼賛」ともとれる文章も、かなり目についた。著者が同じ女性ということもあってか、容姿やファッション性についても多く言及しているが、どれも悪く書かれてはいない。

 

何十万も何百万も貢いだ男たちは、彼女との出会いによって、ひと時の夢を見ていたのだとか。だが、最終的に死んでしまっては何にもならない。彼女も今は独房のなか‥。サイトを通じ木嶋と出会い、関りを“持ってしまった”人間は、けっきょく、誰も幸せになれなかった。

 

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