本当に、今春から始まる予定だった連続ドラマはどう対応するのだろう......
先月からの緊急事態宣言によって、多くが撮影すら満足に行えていないと聴く。収束し次第、再開するのか‥‥それともいっそ「ワンクール」ずらして新たに仕切り直すのか‥‥まったく不透明である。
こんな事態だから予測はできていたけれど、春秋恒例の【世にも奇妙な物語】。こちらの放映も白紙となった。フジテレビの番組公式サイトによれば、当初は5月下旬に「春の特別編」を予定していたという。番組がスタートして、今年は「30周年」のメモリアルイヤーだったのに、コロナのせいで水を差されてしまった。
そこで、提案がある。せっかくの機会だし、他番組に倣って「世にも」も傑作選を、ドーンとゴールデンタイムで送ってみてはどうだろう。ただ、普通の「傑作選」ではいささか芸がない。‥ということで、筆者が推奨したいのは、哀悼の意を込めて、近年亡くなった故人が出演していた名作を世に送る‥‥。
今年でいえば岡江久美子さん、志賀廣太郎さん。少し前に遡れば、大杉漣さんや今井雅之さんも「世にも」には、多数の作品に出演されている。その中でも、選りすぐりの作品。
これが可能なら非常に有意義であり、節目の年を迎えた番組自体の価値も高めてくれると、私は思う。‥参考までに、その「候補」となり得る作品群を、ここに挙げておきたい。
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志賀氏の奇妙作品は、各々好みの分かれるところ。SMAPの特別編【BLACK ROOM】ではキムタクの父親役で、樹木希林と夫婦。コミカルな氏を愉しみたいならコレ。深田恭子主演【採用試験】での、シリアスな演技も忘れがたい。ネタを知ってから見直すと、試験の最中、どうして氏がそういう表情をしていたのか「旨み」を再認識できる。イチ推しだ。
岡江久美子は【思い出を売る男】という作品に、一度だけ出演していた。けっこうファン人気が高く、5年前にリメイクされたのも記憶に新しいけれど、初代・古川(小堺一機)の奥さん役を演じたのが彼女。リメイク版より断然印象に残っているのは、岡江氏がラストで見せた家族の愛、感動シーンで締めくくられたのも大きかった。
レギュラー放送時代から出演を重ねていた今井雅之氏には、案外名作が多い。死刑囚に扮した【扉の先】も捨てがたいが、よりインパクトがあるのは、鷲尾いさ子と夫婦になった【怪我】。身籠った妻(少々ワケアリ)を献身的に支える夫の役を好演。中盤までのホラーな体から一転、「泣ける」奇妙の筆頭格といってもいい作品だ。
10作品以上に出演の大杉漣氏は、以前に同様な文章を綴ったので、そちらを参照してほしい。‥だが、もしあらためてテレビで送るとあれば、初出演から10年目にして「初主演」となった【夜汽車の男】が選ばれるのは、まちがいないだろう。あたかも盟友・松重豊の代表作「孤独のグルメ」を彷彿とさす内容だ。
最後に、隠し味的な番外編として【まる子と会える町】も。2年前に急逝した、さくらももこ原作「ちびまる子ちゃん」がドラマに登場する異色作。本作で青野武(祖父)や水谷優子(姉)の声に、また出合えるのも嬉しい。 《了》