ど、どドストライク.........
キリっとした瞳。決して今どきではない、けれども女性的な肉感といい、何より『一人になりたいからマンションの管理人バイト』『こんな明るい所にいられる人間じゃない』こうした発言に裏打ちされる「影」のある感じがたまらない。先の【THE W】で優勝した女芸人、吉住のことである。
そして、とどめ刺された彼女の「女審判」ネタ。野球の、である。これに恋愛絡みのストーリーを絡めてくるとは、いかにもTHE マニアック。誠に、してやられた気分。斬新だった。
ふたり東京ドームの二階席あたりで、声も発さず、静か~に戦況を見守りたい‥。まだ出合ったことのない、私はあらためてこんな女がタイプだったのだ。
新庄スルー、宮台譲渡で何の夢も希望もないチームに成り変わった、ひいきの北海道日本ハム‥。ダルビッシュ有が福岡ソフトバンクを戦力外となった吉住晴斗に勇気を与えたように、私も芸人の吉住から、明日への活力を頂いた次第。
◇世紀の落球
CS争いの真っただ中。対西武戦でロッテの二塁手・西巻賢二と右翼を守っていたレオネス・マーティンが接触し、落球。サヨナラのランナー還してしまうシーンがあった。
けっきょく、ロッテは僅差で西武をかわしてCSに進出できたから良いようなものの、もし逃していたら、アレなんかも『世紀の落球』だなんて、ファンから罵られていたのだろうか。
‥‥んなわけない。第一、千葉ロッテのファン方は選手に優しい(笑)
西巻(orマーティン)でなくとも、つくづく今の選手たちは恵まれている。類似なプレーを起こした当事者を丹念に取材した澤宮優著【世紀の落球 「戦犯」と呼ばれた男たちのその後】を読むと、そこには彼らの想像を絶する人生があった――
問題のプレーが表紙に
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対象は、北京五輪で拙い守備を連発したG.G.佐藤。1979年夏の甲子園、箕島対星稜の一戦で敗戦に繋がるミスを犯した、星稜の一塁手・加藤直樹。それから伝統の一戦で、結果的に巨人の「V9」を後押ししてしまった阪神の外野手・池田純一。その3選手である。
このなかで本当の意味で「落球」といえるのは、G.Gだけ。残りのふたりは地面に足を取られての転倒が素因であった。したがって「弁明」の意味も込めてではないが、加藤・池田両選手に際しては(G.Gよりも)だいぶページ数を割いている。
プロ野球フリークの私とすれば、やはり池田純一の項。くだりの落球もあって名前は聴いたことがあったけれど、氏の詳らかな球歴に触れたのは本書が初めてだ。
これによると、落球の後は殊勲打を打ち続け、何度もチームを救ったのだとか。別の見方をすれば『2位浮上の立役者』ともいえる。しかし、阪神がわずか「1勝差」で優勝を逃したことによって、ペナント閉幕後、不幸にも池田のそれがクローズアップされてしまう‥。
いわば「こじつけ」同然なのであるが、ファンからのバッシングは相当だったようで、当人は精神面で深刻なダメージを負った。
そこから、いかにして池田氏は立ち直っていったか‥‥。救いの手を差し伸べたのは阪神時代の同僚のみならず、意外な人物との出会いもあった。
当時とはまた性質の異なる、現代のネット文化にも言及。著者は選手(当事者)に対する心無い書き込みにも警鐘を鳴らす。終章では、これら以外の「落球」にまつわる歴史を辿っている。もちろん、かの有名な宇野勝【ヘディング事件】についても。
一個人的には、日ハム球団との間でまとまりかけた「トレード」未遂話に驚く。完全な初耳だ。訊けば池田の交換相手が、あの大杉勝男だったというのだから、実現していれば両球団のその後の歴史は変わっていたかもしれない。