少し前に中居正広が司会の【プロ野球総選挙】という番組があった。
そこでイチロー、王貞治といった超・レジェンドたちを抑え、トップの票を集めていたのが大谷翔平。「7年連続首位打者」「868本塁打」を超えるインパクトは相当で、なんだろう‥‥ 一体この選手の野球人生に付きまとう、記録にも勝る壮大なドラマ性は。
ファイターズ入団からちょうど10年。栗山英樹と歩み続けてきた投打二刀流の道をWBC優勝、世界一で「完結」させる。しかも、最後はマウンドまであがってエンゼルスの盟友・トラウトを空振三振に斬って取る芸当は、なかなか漫画でも描けない。
おもうに、「栗山プロデュース」を、本当に栗山氏の意のままに応えられるのが、大谷翔平という男なのではないか。それを22日の決勝アメリカ戦を観て強く感じたのであるが、エンゼルスサイドも難色を示していたとされるリリーフ登板を敢然とさせw、ダルビッシュ有との「メジャーリレー」を、あのような緊迫の舞台で平然とやってのけてしまうあたり、大衆のウケ方もとい「魅せ方」を氏はよく解っている。‥が、それもこれもすべて「演者」である大谷が応えてこそ、ドラマは成立するのだ。
(C)amazon 栗山監督と再タッグ結成で世界一
しかしながら、あらためてキケンな賭けであったと思う。2009年のWBC優勝投手がクローズアップされているが、どちらかといえばダルが「国際試合」を苦手としているのは明らかで、先発して打ち込まれたかつての北京五輪、当該WBCも、元はといえばリリーフで出てきた彼が打たれて同点に追いつかれた。そして、3失点した今大会での韓国戦‥‥。
そういった投手をロマンチシズムな「栗山プロデュース」の下、あくまで大谷の前に送り出すのだから恐れ入る。おそらく、栗山氏の頭にはこれっぽっちもダルや大谷が点を取られる負のイメージなど湧かなかったのだろう。‥なるほど幸運の女神が振り向くのは、得てしてそうした邪心のない、夢見がちタイプの人間なのかもしれない。
「本気モード」のアメリカに勝利。大昔の「日米決戦」は、日本のお上の方々も端から勝てっこない、内心そう感じながらも、傍からは無謀とも思える戦いに臨んだそうだ。常に見上げていた国との戦いに勝ち、侍ジャパンがついに歴史を動かした。