脚本家・野島伸司の作品が好きで‥‥という話は、以前にも書いたことがある。
実は、関連するファンサイトを運営していたくらい、彼がつくった作品を愛でていたのだが、今クールの【OUR HOUSE】は、一話も視聴していない。
さすがに気にはなったけれど、どうも、見る気が起らなかった。昔なら、ある程度がんばって視ていただろう。しかし、近頃は連続ドラマを視聴し続けるほどの時間、気力と忍耐力もない。視たくもない、読みたくもないものを“無理矢理”目を通すことに、最近、強いストレスを覚えるようになった。‥これも歳のせいなんだろうか。
筆者が現在「家族」を持っていないため、軸として描かれているテーマそのものに、端から関心を持てなかったのも大きい。‥とはいえ、視聴率低迷で打ち切りどうのと叩かれていたところをみると、同様に感じたのは、あながち私だけでもなかったようである。
家族もの‥いわゆる「ホームドラマ」の類は、今、流行らないのではないか。少なくとも、これで若者の心をつかむのは、難しいと思う。すでに“出し尽くされた感”もある。
主演は芦田愛菜。子役(と呼んでいいのか微妙な年頃だが)が主演で大ヒットしたというドラマを、筆者はあまり存じていないが、安達祐実の『同情するなら金をくれ』くらい‥よほどの強いインパクトとメッセージ性がなければ、おそらく大衆は関心を持たない。持てない。
脚本を担当し、昨年あらたにリメイクされた【アルジャーノンに花束を】は“かろうじて”視れたけれども、後半以降は尻すぼみもいいところだった。1990年代を席巻したころの「野島旋風」は、まるで逆。
回を追うごとに、ハラハラ具合は増していき、手がけた作品の多くが「右肩上がり」の視聴率であった。‥彼がすごいのは、ラブストーリーであろうと、社会派ものであろうと、ジャンル問わず、一様に「ムーブメント」を巻き起こしてしまうことだ。私は野島伸司の才能に、心酔していた。
Amazon.jpより
一方で昨今の低迷っぷりには、同情すべき点もある。若者たちのテレビ離れが加速したのもあるし、以前のように「際どい」作品を生み出せなくなったのも、彼の才能を“死なせて”しまった、大きな要因として考えられる。
放送できるギリギリの範囲の、際どい作品‥‥。あの当時、野島がもっとも得意としていた王道なパターンであったが、減少する視聴率とは反比例して、視聴者の目は昔よりも厳格になった。
2年前の【明日、ママがいない】騒動が、記憶に新しい。イジメ、虐待などが作中に描かれれば『問題アリ』と、直ちに抗議活動が起こる。‥これは当時もあるにはあったろうが、日常にインターネットが普及した現代は「外野」の人間も巻き込んで、事態を収拾するのに、相当な時間と労力を要するようになってしまった。ずいぶんと“やりにくい”時代になっただろう。
そんな要素がたくさん詰まった【人間・失格 ~たとえばぼくが死んだら~】(1994年)は、今なら即刻「放送中止」を求める声が殺到しそう。‥だが、この作品こそが、私にとっては「ベスト」なのである。
全体的に漂う、あのジメジメとした空気感。カメラ小僧に、女装教師‥ウサギの血を抜く異常な気質を持った生徒たち‥イジメを苦に自殺した少年‥その少年の「敵討ち」に執念を燃やす父親‥‥。
たまらない。まさに「野島ワールド全快」だった。特異な登場人物たちによって繰り広げられる人間模様に、毎週、ハラハラしていた。続きが気になって仕方がなかった。‥今、こういったドラマがあるだろうか。おそらく答えは「ノー」。もう、作れないのである。野島伸司にも誰にも....
今回の【OUR HOUSE】のように食わず嫌いしている有様なのだから、ファンと呼べるのかは、実はけっこう疑わしい。本当に野島を愛するファンならば、筆者に対して、きっとこんな言葉を投げかけたくなったのではないか。
そもそも、おまえは「ファン・失格」だ