「下位指名された選手で活躍しているのは、武隈くらい」
誰による言葉だったかは失念してしまったのだけれども、そうライオンズのある首脳が嘆いていたそうだ。
‥気になって私も近年ドラフト下位で指名された選手の面々を眺めていたら、たしかにいずれもパッとしない。一般的に考えたら、下位だと「将来性」を見込んでの指名。即戦力は端から期待していないのだろうし、いずれ戦力になってくれれば‥程度の認識なのであろうが、そのまま出てこなければ、選手は半生を棒にふってしまうことになり、もちろん、球団にとっても損失である。
おもえばこの球団、下位どころか“上位”も危うい。
以前、大谷翔平がドラフト候補となった際、高校の先輩にあたる菊池雄星が『うちには来ない方がいい』なんて旨の発言があったのを憶えている。はたして真意は定かでないけれど、どうも私には彼の言葉が生々しく聴こえた。
その菊池をして、プロ入りから7年経っても尚、一人前に育てたとは言い難いし、6球団競合の末に引き当てた大石達也も迷走中のまま‥。森友哉は一体どこに向かわせているのか、未だ見えてこない‥。
何も球団ばかりの問題ではないが、彼らが他チームに行っていたら‥すなわち西武以外の球団であれば、もしかしたら、今よりは活躍していたかもしれない。ドラフトは、ときに非情である。
「ドラフト下位指名ならプロへ行くな!」という、泉直樹著の本を以前に読んだ。西武のような球団を見ていると、それも大いに頷けるが、一部、例外もある。とりわけ白眉は北海道日本ハムファイターズだ。
下記は2008年度のドラフト指名選手の内訳である。
同年は、いわゆる「目玉」が不在だった。その時点でチームが抱える弱点を徹底的に補うことに着手(クジを外しまくり、結果、大社左腕2枚を上位指名した昨年のドラフトともかぶる)。将来の正捕手となるべく大野奨太の獲得で、今日の「捕手王国」の礎を築き上げた。
即戦力を期待した2位、3位の両右腕は思惑通りに一年目から活躍し、榊原は新人王を受賞。実働時間は短かったが、代わりに7位の谷元圭介が、ブルペンの屋台骨を支える働きを現在にいたるまで、みせてくれている。
育成に時間がかかる高卒野手、中島・杉谷の両選手は、こちらも球団の思惑通りに後年“きちんと”台頭してきて、今では共に欠かせない戦力だ。‥こうみてみると、即戦力と育成を睨んだ指名が実に巧み。
上位選手が機能せず、下位選手が思うように育ってこない西武首脳がこれを見たら‥泣きそうになるのではないか。こうしたドラフト戦略の巧さが、近年の両球団の「明暗」を分けた気がしないでもない。
4日のマリーンズ戦で増井浩俊が久々に先発し話題となった。昨年までプロ通算73セーブ、121ホールドをあげた彼も、2009年のドラフト5巡目。長年抑え不在に泣くライオンズとて、その気になれば増井を獲得できたわけである。
大谷や陽岱鋼、中田翔ら「ドライチ組」が順調に飛躍する中で、その脇を固める下位指名選手の活躍。トレードや外国人選手ばかりには頼らない‥‥理想的な布陣を、まさしくドラフトによってつくりあげた。
‥前日の同戦では、象徴的な光景が。2013年ドラフト3位の好調・岡大海に代え、2008年6位の杉谷が満塁一掃のタイムリーを放つ。豊富な駒を揃え、また戦力になるまで地道にファームで鍛え上げてくれた球団に、きっと栗山監督も頭が下がる思いだろう。