アキラって、イイね!!
ここでいう「アキラ」とは、お玉を持った裸の芸人ではなく、今年中日ドラゴンズに入団した金の卵ではなく、先日チラッと触れたギター侍(本名:波田晃)でももちろんなく、ジャーナリストの池上彰氏のことを指している。
70年以上前に起きた出来事を蒸し返して、何を今更ゴチャゴチャ言ってきてんだろう‥‥あの常に喧嘩腰の、迷惑な隣国について。現代人には到底理解できぬそんな疑問点も、氏が文春に寄せている連載で氷解できた。まったくもって向こうの「主張」自体は、依然理解しがたいのであるが。
18日放送の金曜プレミアム、フジ系【池上彰スペシャル!世界が映した日本の100年】も秀逸な番組だった。超貴重映像と、池上氏のたいへん解かりやすい解説付き。‥本当に、古い映像マニア?の筆者がこれまで観たこともなかったフィルムの数々は、目から鱗であった。
来日時のヘレンケラーの肉声は感動モノ。“動く”べーブ・ルースに、エッフェル塔の設計士と若き日の昭和天皇。外国の視点からとらえた、戦時下の日本。アメリカのテレビ放送で辛辣な発言をしていたジョセフグルー氏が、実は「親日家」であったとか‥。本の中でしか知らなかった偉人たちの往時のお姿に、私の胸の高鳴りは終始止むことがなかった。
‥‥という話をしつつ、今年に入ってから観た旧作映画を2本、お届けしよう。
死刑判決をくだされたレイプ犯が執行の三日前、名指しで妙齢のジャーナリストとの面談を希望する【ライフ・オブ・デビット・ゲイル】。もうこの設定からして、緊張感たっぷり。
ジャーナリストに扮した女性、どこかで見覚えのある役者だと思っていたら【タイタニック】でローズを演じていたケイト・ウィンスレット。人生の最期に接するオンナとしては悪くない。むしろ最高だ。‥が、本作においては単なる下心などではなく、囚人が彼女を“指名”したのには、きちんとワケがあった。
「冤罪」を確信したジャーナリストは、死刑回避のために奔走。刑の執行当日、ついに決定的な証拠を手にし、男の元へ急ぐ。死刑囚の運命は――といったところが常なのだけれど、これで終わらせなかったのが、本作品の評価を高めた所以。一筋縄ではいかなかった。すべてを知り、悟り、愕然とするラストのケイト・ウィンスレットも‥‥やはり美しい。
結果的に、ジャーナリストの性別が重要な問題ではなかった。彼の担当は、別に池上彰氏でもよかったのである(笑)。要は優秀な書き手、“表現者”を求めていた。あの「ストーリー」を描ききるのは、それほど難儀なのだ。
◇この世界の片隅に(映画)
戦時下の日本、広島が舞台となっていた作品。‥‥とくれば、どうしても原爆を思い浮かべてしまうのだが【この世界の片隅に】は、市街地からは少し外れている。
結論からいって、数々の戦争ドラマを観てきたなかでも、最上位の評価だった。まず【火垂るの墓】のような暗さがない。‥いや、明るければ良いってものでもないけれど、主人公・北條すずの屈託のなさ、前向きな姿勢に癒され、それとあまりにもマッチした、すずの声優“のん”の広島弁が、なんとも心地いいんじゃけぇ(笑)
後半以降、空襲は増すばかりで、たしかに視聴者方にはだんだん辛い描写も増えてくる。食卓に並べられるオカズの数も減ってゆく。そうした戦時下でも、すずは‥すずだけは、幼少の頃と同じように純なまま、ほとんど変わらなかった。
当初は煙たがっていた義姉や近隣住民にも受け入れられ、嫁ぎ先の町にも馴染んできた‥‥最中に起こった、あの事故。自分を見失いつつあった。でも、本当の“見せ場”はここからなのだ。いかにして、すずは立ち直っていったのか。この作品が暗くはならなかった理由が、そこにある。
新婚夫婦が徐々に愛し合っていく様は観る者の心を暖かくし、義姉の“変化”は、私たちが火垂る‥で受けた小母さんのときのショック、トラウマを払拭させてくれる(笑)
個人的には、ずっと気になっていた「残飯シチュー」。文字どおり、アメリカ軍兵士の食べ残しをごちゃ混ぜにして煮込んだ代物だ。涙が出るほど旨かったという人もあれば、まったく真逆な感想を口にする人もいて、人によって天と地ほど評価が割れる。終盤に明かされた、気になるそのお味とは――