明日、もし自分が死ぬと分かっていたら、体験したいことがある。しかし、それはおそらく、生涯叶えられることはないだろう。その行為が法に触れてしまうのだ。
だから、明日死んでしまうのであれば‥‥。もうこれ以上、自分には害が及ばないと分かっていたのであれば‥‥。私は、先日逮捕されたバンドマンのP氏が長年愛用していたとされるクスリの類を人生で一度、試してみたくなってしまう。常習性があるのは、もちろん知っているが、死んでしまうなら関係ない。
そもそも、頭ではイケナイと理解していても、実際にやったことがない人が大多数なのだ。いくらかつての常習者のインタビューを聴こうが、リアリティが伴ってこない。
『いったん手を染めたら終わり』『使ったら留置場行き』は、彼らだって解っていたはず。‥にもかかわらず、やめられない抜け出せないクスリの「高揚感」とは、一体どれほどのものなのだろう。
くだりの報道を目にするたび、どこかでそうした「衝動」にも駆り立てられる。“知りたい”は、地球上の生物でヒトだけが持ちあわせている心理。何も知らないまま死んでいくのが惜しい‥というのも、ごく自然な人間の真理であると自分は思う。
と、あくまで心理学上の話。令和時代も活動していきたいので、ガチに受け止めず‥‥また関係者方は決して私に連絡してこないでほしい(笑)
それと幸い、一本の映画によって「疑似体験」のようなことができた。クスリの恐ろしさも、漠然とだが、理解したつもりだ。実際、ソレを観ただけで具合が悪くなってしまった「超・危険すぎる」作品を今回、賢者の皆さまだけにこっそりお届けしたい――
若き日のマーロン・ウェイアンズが万波中正氏クリソツ?
【レクイエム・フォー・ドリーム】 2000年公開のアメリカ映画。ジャレッド・レト主演。
孤独な未亡人サラ(エレン・バースティン)は、ある日TV出演の勧誘電話を受けた。彼女は晴れのTV出演のためにダイエットを決意。一方、息子のハリーは恋人と将来の夢を語りあって日々を過ごしていた。そんな2人に友人が麻薬密売の仕事を持ちかけるが… ※シネマトゥデイより
上のP氏報道の際、『某国の紙幣を用いて‥‥』なんてことがしきりに伝えられていたけれど、ドラッグ社会が映し出される当作品でもカバー。
なんと“ヤク中”側からの目線で描かれる、問題作。ところどころで流行りの「VR」ごとくなカットが入り込み、視覚的に訴えてくる。これが、かなり強烈。気分が悪くなった最大の要因は、おそらくこのためだと思われる。あらたに観る善良なる民は、注意が必要なレベルだ。
薬物中毒に陥った、ごく近しい関係の4人の男女が「四者四様」な地獄を見る。当作品が重きを置いているのはこの部分の方であり、俗にいう“キメた”彼らを観られるのは中盤手前までだ。
ドラッグに溺れる若者たちも悲惨だったが、とりわけエレン・バースティン演じるサラの、だんだん廃人と化していく様は、ある意味私たちの想像以上。クスリによって、こうも人間が壊れていくのかというのを、身をもって彼女が「体現」してくれている。
【レクイエム・フォー・ドリーム】を視聴し、“知識として”クスリの怖さを知ることができた。‥何かのキッカケでクスリに手を染めようとしている者も、これを観てからならなら躊躇するにちがいない。わずかな時間得られる快感の代償はあまりに大きく、結果、身も滅ぼしてしまうのだ。
もはやクスリの存在すら知らず、まったく気に留めず、作品自体観ない方が本当は身のためかもしれない。観終わったあとの疲労感といい、筆者もいささか後悔した。
内容や後味の悪さも事前に知ってはいたのだが、でも、逆にそう言われれば言われるほど『怖いもの見たさに』という、不可思議な心理がはたらいてしまうのも、人間の性‥‥なのか。
くれぐれもご注意のほど。