各地で甚大な被害をもたらした台風19号――
筆者の住んでいる地区(関東地方)では目立った被害はなかったけれど、さすがに記事執筆どころではなく‥‥。というのも、約半日間に亘って「避難所」にいた。一般的に“お年寄り”と呼べる年齢ではまだなく、オツム以外どこも悪くない私が避難所に頼った理由は大まかに、二つある。ひとつは近くを流れる河川が氾濫する可能性があった点。これは重大だ。そして、もうひとつは「心理的に追い込まれた」点だ。
台風上陸前、TBSだかどこだかの男性アナウンサーが『あなたは一人ではありません』頻りに、そう述べていた。しかし、自分は独りだったのである。‥彼の発言には、もっと深い、別種の意味が込められていることは片隅で何となく理解しながらも、次第に、妙な不安感に苛まれていった。私は本当に一人で大丈夫なのか、と。こうして、予め指定された避難所に向かったのであるが.......
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人生初の体験で気づいたことを徒然なるまま、ここに書き留めておこう。
其の一【避難所でも孤独】
他人とはいえ、誰かといれば多少気は紛れると思ったら大間違い。避難所である近所の公立学校に入った際には、すでに大勢の人たちがいた。体育館で各々「二畳」ほどの場所を確保し、身を寄せ合っている。‥そう、“家族単位”で避難してきた方が大多数であり、筆者のような単身者は、ほぼ皆無であったということ。盲点だった。
たくさんの人がいる中で、ひとりぼっち‥‥。一度でもコレを経験された方なら解ると思うが、よけいに孤独が身に染みる。完全に「逆効果」だ。仕方なく私はステージ?の上の端っこの方で体育座りをしながら、時間をやり過ごした。
其の二【食事面】
勝手なイメージで、何か「おにぎり」のようなものが支給されるのかと思っていたら、世の中そんなに甘くはなかった(笑)。ただし、こちらでも申し訳程度に「お湯」は提供してくれていたので、カップ麺のような食料があると便利。飢えは凌げるだろう。筆者もそうした。
顔見知りなのか、隣同士で持参した食べ物を交換し合ったりしている。台風本体が刻一刻と迫ってきていたが、彼らにあまり切迫した様子はない。この辺りは大規模な地震災害などと違い、あくまで“一時的な避難”という、心理的余裕が成せた業‥なのか。
其の三【衛生面】
うちのところは幸いにも電気・水道は止まらずにいたので、トイレは不自由なかった。ただ、いかなるときも女性便所が行列をなすのは言うまでもない。今は比較的『過ごしやすい季節』といえるが、避難所の中は暑かった。‥そりゃそうだ。広大とはいえない空間に、百人以上のヒトが「密集」すれば、その熱気だけでスゴいことになる。これが真夏の時期だったと思うとゾッとする。
其の四【避難所での過ごし方】
お喋りに興じるが人が多数。まぁ、確かにそれくらいしかやることがないだろう。ワンセグ機能を持つスマホとて緊急時に備え、電池を無駄に消費するわけにもいかない。さて、“ぼっち”の私はどうしたかというと‥‥。
荷物にならない、軽めの文庫本タイプの書籍を予め持参するも、周囲の雑音でまったく集中することができず、とても本を読んでいられる環境ではなかった。
そこで重宝したのが、ゲーム機。携帯でプレイする、いわゆるアプリなどの類ではなく。私の場合は「DS」だった。退屈しのぎにもなって、一石二鳥。お勧め。避難所における“ぼっち”にも、たいへん強い味方だ(笑)
其の五【深夜の緊急搬送】
避難所での生活というのは、ストレスのかかるものだ。‥‥半日程度の時間であっても、それは十分窺い知れた。実際、お年寄りと思しき方が夜中に運び出されるといった一幕もあり、現場は常に緊迫している。当然ながら「安住」とは程遠い。
いよいよ耐えられなくなって、私自身は台風が一段落した明け方には帰路についたが、こういった経験は、できればもうしたくない。