『涙でちゃう!』
‥とは、斎藤佑樹の投球を視察した際の栗山英樹監督。2021年に還暦を迎える男の発言にしては、ずいぶんとお茶目である。
昨シーズン、ついに一軍登板なしに終わってしまった斎藤。それもそのはず、二軍でもわずか1勝‥防御率は9点台(9.31)と、まさに「壊滅的」だった。いくら「佑ラブ」な栗さんでも、そんな成績の斎藤を上に引き上げたら、他のナインの反発を買うのは解かっていたのだろう。
傷が癒えた佑ちゃんは、ひょっとしたらひょっとするのか――
ただ、キャンプからオープン戦にかけ好投を見せるも、シーズンに入ってサッパリ、というのが、今までは多かった。しかも、シーズンの「初登板」にいきなり脆さを露呈させること数度。これでは首脳陣に与える印象も甚だ悪く、たとえば先発を務めた2015年の千葉ロッテ戦では味方に8点の援護をもらいながら、5回も持たずに途中降板‥。
開幕ローテをつかみ取った3年前、2018年の同戦では、やはり大量の援護点があったのに、8与四死球で自滅した‥。出だしからこのような投球をしていては必然、波に乗れない。
シーズン開幕前、メジャーチーム相手に好投したことも......
前回の金子弌大ではないが、この斎藤佑樹も起用法が定まらない投手だ。ここ5年を振り返っても先発12試合、中継ぎ(先発以外)で19試合務めている。もっとも、はなから中継ぎを希望していたとされる金子のケースとは異なり、首脳陣(主に栗さん)が斎藤の使い方、よりよい生かし方を模索し続けてきた、その表れなのかもしれない。
この期間のデータをお伝えするのは心苦しいが、いちおう、先発で計1勝6敗。防御率6.75。中継ぎ登板では19試合で1敗、防御率は3.81だ。‥どちらもパッとしないと言われてしまえばそれまでだけれど(苦笑)、なかなか見せ場を作れなかった先発と比べると、後ろの方が良いという数字。
一般的に投球回数が少なく、防御率も悪化しやすい中継ぎ投手にあって3点台なら「まずまず」といえるのではないだろうか。ただし、彼の場合は勝ちパターンの試合で継ぎこまれるわけでもなく、他の中継ぎ投手と一緒くたにできるわけでもないが、それでも先発時よりは、はるかにマトモだ。
「元」宿命のライバル・田中将大の日本球界復帰によって、否が応でも斎藤佑樹の名が取り上げられるシーンが、今年は多くなるだろう。人間万事塞翁が馬、これを機に斎藤自身も変わることができれば。先発が厳しければ短いイニングで‥‥どうにか活路を見出し、寵愛のボスを、今度は「嬉し泣き」させてほしいものだ。