引っ越したい......
なら『引っ越せゃいーじゃん』という話なのだが、少し特殊な悩みをかかえている。今の賃貸マンションには約10年近く住んでおり、特別、不便なことはないけれど、物理的に色々なもの、箇所がさび付いてきた。
家電製品などは買い替えればいい。しかし、これだけ長く居ると水回りや壁等の汚れは、もはや日々の清掃をもってしても、なかなか行き届かないところもあって限界はある。備え付けのエアコンも、今のところ問題なく使えているから良いものの、一体いつの時代の代物なのか判らないほど年季が入っていて、欲をいえば取り換えてもらいたい。
あれこれ考えているうちに面倒くさくなって、いっそ引っ越してしまおうか‥と相成ったのだが、今住んでいるこの街並みといい、商業娯楽施設も豊富にあり駅からも近いといった周辺の環境もたいへん気に入っていて、ここは手放しがたい部分‥。
目と鼻の先の近所に引っ越す? ‥いや、たしかに気分転換にはなるかもしれないけれど、おそらく今より良い物件は近場でそうそうは見つからないだろうし、そもそも安くはない引っ越し費用を捻出して、そこまでする必要があるのか‥。
なんなら同じマンション内で現在空いている部屋があればそこに変えてもらう?‥そんなことができるのか?‥仮にできたとして、住所(部屋番号)が変更になるのは変わりはないのだろうし、お役所的な事務手続きも必要になってくるかもしれない。住所の「〇〇号室」の箇所だけが変わったがために。それも面倒くさい。
こんなとき、もっと引っ越しの明確な理由、“きっかけ”があれば私も踏ん切りがつくのだろう。彼女と一緒に暮らすからもう少し広い部屋に‥とか、職場が変わったから‥とか、もっと解りやすい何かが。生憎フリーランスで、同棲をするほど親密な彼女、彼氏?も今の私にはいない。
‥結局、もうしばらく私はここに居つくことになりそうだ。気づけば、凡そ単車者向けと思われる同マンションに10年も住んでいるのは、管理人さん(オーナー)と自分くらいなのではないか。「副管理人」を名乗ってもいいくらいだ。
そういえば最近、こういった本が話題になっているらしい。流行りの「事故物件」に住んでみた、的な類......
私もチラッと目を通してみたが、意外と本格的。雰囲気のある文章で、数々の“いわくつく”物件をレポートしている。そこで過去に起こった事件とかを特に気にしないのであれば、問題ないのではないか。相場より家賃もだいぶ安く設定されているし。ただ、やっぱり一人は怖いかも。それを知った後なら尚更。
そうそう。施設が古いのと、もうひとつ今の住環境に筆者に不満はあった。それは【隣の声】。近所付き合いはないので定かでないが若い女と思しき、隣室の住人。
女性の声はただでさえよく通るのに、最近は幾分涼しくなってきたものだから、窓を開けて誰かと喋っている。もう「丸聞こえ」な塩梅。聴きたくもないのに‥。私は一人暮らしで誰にも迷惑をかけずに、静かに生活をしているというのに、こんなときは損をしている気分にもなる。
松下由樹が出演した【隣の声】は、やはり隣室から聞こえてくる「音」に悩まされていた。しかし、隣には誰も住んでいなかった‥。まぁありがちな怖ストーリーである。あらためて振り返ってみると「音」の発生源が、いまいち判りづらい。隣になければ、狭い壁の中に声の主はいたのか? 多分そうだろう。
とまれ、ここで“怪奇音”なごとくに使用されてしまっている松任谷由実の曲がいささか気の毒であり、この作品によって当該曲がトラウマになった視聴者も少なからずいたと思われる。ちゃんとユーミン側に許可はとったのだろうかと、また別の心配が頭をもたげてしまう。
まるで「事故物件」のように取り扱われていた、続きを予感させるラストはまずまず。