牧瀬里穂主演の映画【ターン】。この作品、誰もいない世界で同じ日、同じ時間が何度も繰り返される。もし、それと同じ状況に置かれたら人は‥‥やはり「気が触れて」しまうのだろうか。
そんな中でも、前向きに生きようとする描写が【ターン】で観られた。物は考えようといったところだが、何事も限度はある。次第に追いつめられていく主人公‥‥。しかし、劇中の牧瀬はまだマシかもしれない。
【アウターゾーン】では時空のゆがみによって、同一車に轢かれ続けるという、同漫画史上最高クラスのバッドエンドを迎えた男がいる。‥これなら、いっそ死なせてもらった方がいい。というか楽。「繰り返し」の善し悪しは、どうもシチュエーションによりそうだ。
そこで今回、状況別に見た、代表的な繰り返し「奇」作品をあらためて振り返ってみよう。何度も視聴と「研究」を繰り返した結果、☆の数が多いほど『絶対に体験したくない』、より不幸なラストとなっている。下記の作品を知って尚、繰り返したいと思えるか否かは、あなた次第である――
「ふつう」がいちばん。ほんとにそのとおり
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【昨日公園】 主演:堂本光一 ☆☆
前述の【ターン】に近い世界観ではあるが、街にヒトがいる分だけ恵まれている。ただ、このケースで厄介だったのは、主人公以外の人物に「繰り返し」の意識は無いこと。だから、打ち明けたところで周りに変人扱いされるのが常。かならず災難に巻き込まれてしまう友人を救出しようと、幾度も時間を遡って奔走する主人公がいい。好例。
【厭な扉】 主演:江口洋介 ☆☆☆
京極夏彦作の小説を実写化。したがって、先に結末を知っていた方もいると思う。大抵の繰り返しモノは「日」単位なのだけれど、こちらは「年」単位という、なかなか珍しいパターン。先ほど挙げた作品とちがい、本人にその意識はなくて、同じ「一年」を、延々に続けているという‥‥。主人公が殺されるオチはともかく、その時間で「良い夢」を見ているのも確かであり、最悪の部類には入れられないだろう。
【リフレイン】 主演:松崎しげる ☆☆☆☆
「繰り返し」の仕方は重要だ。何気ない日常が繰り返されるのならまだしも、当作品は警察の取調室から。朝から晩までの尋問、これを毎回。‥こうなってしまったら、死ぬにも死ねない。映像では確認できないけれど、相当な回数、同じ一日を繰り返してきたと思われる。さすがに最後は、気が触れたような主人公の描写も。
それと酷似しているのは【そして、くりかえす】(1998年春)。同様に、きっかり午前0時になったら「前日」に戻る。非常にわかりやすい。内村光良が主演なせいか、作風自体はだいぶライト。ラストシーンなど、らしさ全開である。主人公なりに「くりかえし」を好意的に受け止めようとするシーンも収められていて、ポジティブな要素も多い。
【階段の花子】 主演:徳井義実 ☆☆☆☆☆
少々本筋とは異なるが、いわゆる無限地獄の類。その点では、先の【アウターゾーン】と似たタッチ。「身を置き換えたくない度」では、かの有名な【懲役30日】にも匹敵するだろう。オチへの持って行き方やタイトルの付け方(してやられた!)、醸し出す雰囲気もなかなか良かったし、秀逸作ではある。
【笑う女】 主演:榎木孝明 ☆☆☆☆☆
もっとも奇妙らしさを生かせた、「繰り返し」作品の最高峰。ちなみに数年前に番組が開催したリメイク企画で、当作品を、筆者は推している(笑)。こちらも本人にその意識はないパターンなのだが、最後に全てを悟って絶望してしまうシーンが堪らない‥もとい、忘れられない。
厳密にいうならば「繰り返し」というより、別次元で生きる自分‥‥といった方が適切なのかもしれない。いずれにせよ、主人公には変わりのない結末が待ち受けている。笑う女役・真行寺君枝氏の怪演も相まってトラウマ必至? 《了》